何が発表されたか

AppleはWWDC 2026で、Apple Intelligenceの次世代版と、ゼロから作り直したSiri(呼称はSiri AI)を公開しました。Siri AIはシステム全体の操作実行、画面内容の読み取り、メール・メッセージ・写真からの個人コンテキスト参照に対応し、専用アプリでiCloud経由のデバイス間同期も提供します。

基盤となるAFM第3世代は5モデル構成です。AFM Core、AFM Core Advanced、AFM Cloud、AFM Cloud Imageの4つはApple Silicon向けに学習され、Gemini frontierモデルの出力で「リファイン(精製)」されました。最上位のAFM Cloud ProのみがApple傘下のPrivate Cloud Compute(Google Cloudに拡張済み)上のNvidia GPUで動作します。Apple幹部Subramanya氏は品質をGemini frontierモデルと同等と説明していますが、ベンチマークは未公開です。

Google依存ではない、というAppleの主張

注目すべきは、AppleがGoogle Assistant、Geminiアプリ、Googleが外販するモデル、Google Searchのいずれも利用しないと明言した点です。Federighi氏は「我々が使うGoogle Assistantの量はゼロだ」と述べています。世界知識は数年かけて構築した自社の「World Knowledge Service」が担い、ローカルとクラウドの振り分けは「System Orchestrator」が行います。

EUでは提供せず

Siri AIは英語圏先行で、EUのiOS/iPadOSには投入されません。AppleはDMAを理由に挙げ、サードパーティアシスタントにSiri AIと同等のアクセスを許諾せざるを得なくなると説明。代替案として「Trusted System Agent」ミドルウェアと18か月の段階展開を提案しましたが、欧州委員会は他の提案と合わせて却下しました。DMAの対象がiOS/iPadOSに限られるため、macOS 27とvisionOS 27ではEUでもSiri AIが利用可能。一方、watchOS 27はSiri AI有効なiPhoneとのペアリングが前提のため、EUユーザーは実質利用できず、EU開発者はiOS/iPadOS/watchOSで新機能のテスト・統合ができません。

体制と背景

WWDC 2024で見せた個人化Siri構想がiOS 18で大幅遅延した苦い経緯を踏まえた再起動です。Tim Cook氏は今回が最後の基調講演で、9月にJohn Ternus氏へCEOを引き継ぎます。最上位の端末処理にはiPhone 17 Pro/iPhone Air、12GB RAMのM4 iPad、12GB RAMのM3 Macが必要で、iPhone 17(8GB)やiPhone 16 Pro Maxは対象外。非対応端末はPrivate Cloud Compute経由となり遅延が増します。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本企業の役員・事業責任者が見るべき論点

1. iOSアプリ事業者・EC・SaaS:「Siri AI前提のUX」設計を急ぐべき 日本はAppleシェアが高く、Siri AIによる「画面読み取り+システム操作」が広がれば、自社アプリ内のCV導線をSiriが「代行」する世界が現実化します。Foundation Models Frameworkが画像入力・カスタムスキル・サーバー実行に対応した今、iOSアプリを持つEC・予約・金融SaaSは、自社機能をSiri経由で呼び出される前提に再設計する必要があります。「Siriに名指しされない=存在しない」という検索SEO的な競争が始まります。

2. 受託開発・SIer:EU向け案件は分断対応がコストに DMA対象のiOS/iPadOSだけEUで機能差分が出るため、グローバル展開する日本メーカー(自動車・家電・小売)のアプリは、リージョン別の機能フラグ管理がさらに複雑化します。受託側はこの「地域別Siri統合」の見積もりロジックを今から準備すべきです。

**3. 経営判断:「Google依存ゼロ」の建付けは戦略的示唆 Apple自身がGemini技術をライセンスで取り込みつつ「Googleには依存していない」と整理した構図は、自社AI戦略の参考になります。フロンティアモデルを内製せず、自社ドメイン知識(≒World Knowledge Service相当)とオーケストレーションを握るのが現実解です。

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