何が起きたか

Anthropicが公開したClaude Sonnet 5は、Artificial Analysis Intelligence Index v4.1で53点を獲得し、GPT-5.5(high)と並ぶ5位。上位にはOpus 4.8(56点)、GPT-5.5(xhigh)(55点)、Opus 4.7(54点)、そして再度一般提供が始まったClaude Fable 5(60点)が並ぶ。前世代Sonnet 4.6の47点からは6点の上積みで、Terminal-Bench v2.1で9点、Humanity’s Last Examで10点、SciCodeで7点、フロンティア物理推論テストCritPtでは14点改善して17点に達した。

価格据え置きの裏で起きていること

表面上の価格は入力$3・出力$15/百万トークンで前世代と同じ。しかしArtificial Analysisの計測では、Intelligence Indexの平均タスクコストがSonnet 4.6の約$1.20からSonnet 5では$2.29へと跳ね上がった。上位のOpus 4.8($5/$25)ですら平均$1.97で、より安価なはずのSonnetが実運用では逆転して高くつく事態が起きている。

原因は消費トークン量だ。「max」設定ではSonnet 4.6比で出力トークンが約40%増、AA-BriefcaseやGDPval-AAといったエージェント系ベンチマークではエージェントループの回数が約3倍に達する。モデルが「より粘り強く考える」方向に振れた結果、1タスクあたりのトークン消費が膨らんだ。

繰り返される「見えない値上げ」

このパターンは今回が初めてではない。Opus 4.7投入時にはトークナイザが変更され、同じテキストが約30%多いトークンに分割される現象が起きた。開発者Abhishek Rayは1.325〜1.47倍の増加を計測し、483件超のコミュニティ分析では平均37.4%の増加が報告されている。Sonnet 5ではトークナイザ由来の増加に、よりエージェント的な振る舞いによる消費増が上乗せされる形となる。

9月1日までは$2/$10の販促価格が適用されるが、Artificial Analysisは通常価格で計測している。中価格帯ではDeepseek V4 ProやGLM-5.2といった中国勢が同等性能を大幅に安く提供しており、「トークン単価」ではなく「標準タスクあたりコスト」で価格を語る必要性が浮き彫りになっている。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

「単価」ではなく「1機能あたりコスト」で見直せ

AI機能を組み込んだSaaSやカスタマーサポート自動化、社内RAGを運用する事業会社にとって、今回の件は「価格表の据え置き」を鵜呑みにする調達方針が破綻していることを示す。CFOに提出する原価試算をトークン単価ベースで組んでいる企業は、実測ベースの単価に組み替え直す必要がある。

特に問い合わせ対応や議事録要約のようにトークン消費がユーザー数に比例するSaaSでは、Sonnet 4.6→5への「無思考アップグレード」で粗利が数ポイント吹き飛ぶ可能性がある。ChatGPT系プランも含めて、四半期に一度は「1リクエストあたり実測コスト」をダッシュボード化すべきだ。

受託開発・SIerは提案書のモデル指定を「Sonnet系」といった曖昧な書き方から、「max設定不可・トークン上限X」など運用条件込みで書く運用に切り替えたい。エージェント系機能は3倍のループが常態化しつつあり、成果報酬型の契約では致命傷になる。

中価格帯ではDeepseek V4 ProやGLM-5.2の存在感が増しており、社外に出せない業務は国内モデル、汎用処理はコスト最優先で中国勢、フロンティア推論のみClaude/GPTという三層構造を検討する時期に入った。

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