内部で語られた「思ったほど進んでいない」

Reutersが入手した音声によれば、ザッカーバーグは木曜のタウンホールで、少なくとも過去4カ月のエージェント型AIの進捗が期待通りには加速していないと発言しました。組織再編は「想定ほどクリーンには進まなかった」とし、経営陣がタイミングを読み違えたことも認めています。

背景には、1〜2月に策定した大がかりな組織改編があります。MetaはAI部門をAlexandr Wangの下で「Meta Superintelligence Labs」に再編、他社の人材を9桁ドル規模の報酬で引き抜き、5月には全社員の約10%をレイオフ、およそ7,000人をAI部隊に配置転換しました。狙いは巨額のAIインフラ投資の原資確保と、AI活用による社内効率化です。

Wangは「Watermelon」でGPT-5.5に追いついたと主張

一方、AI責任者のWangはより強気です。Business Insiderによれば、Wangは開発中の次期モデル「Watermelon」がベンチマークでOpenAIのGPT-5.5に追いついたと発言。4月にリリースされた「Muse Spark」(コードネームAvocado)と比べて桁違いに大きな計算資源を投入していると説明しました。加えて、Muse Sparkのコーディング・エージェント機能を大幅強化するアップデートと、AnthropicのClaude Opus級のコーディングモデルが「近日中」に投入されるとしています。

WangはX上で、ザッカーバーグの発言は業界全体の進捗についてであってMeta単体の話ではないと補足しましたが、社内トップ2の温度差は明確です。

1,450億ドル投資と「余剰GPUを売る」ハイパースケーラー化

Metaは今年AIインフラに最大1,450億ドルを投じる計画で、Big Tech全体では7,000億ドル超の投資規模となります。さらにBloombergは、Metaが余剰の計算資源を外部顧客に販売するクラウド事業の構築を進めていると報じています。SNS企業がAWSやGoogle Cloudと同じレイヤーに降りてきつつある、という構造変化です。

CTOのAndrew Bosworthは、社員のマウス操作を記録してAI学習データにする物議を醸すプログラムにも言及。機微情報が露出したため一時停止し、社内調査では学習データに混入はなかったと説明。再開時はオプトイン方式に切り替えるとしています。4月の導入時に「オプトアウト不可」と告知していたことからの明確な後退です。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本の事業会社の役員が読み解くべきは、「AIエージェントは思ったほど早く仕上がらない」というMeta内部の生の声です。国内SaaS・EC・受託開発の現場では、Claude CodeやDevin級のツールで劇的な生産性向上が語られがちですが、世界最大級の投資と人材を集めるMetaでさえエージェント化に苦戦しているという事実は、社内の「AI導入で人員を減らす」計画の前提を見直す材料になります。

具体的には、①受託SIerは「AIエージェントで工数半減」を前提とした値下げ提案を急ぐ必要はなく、むしろ運用・検証工程で稼ぐ構図に軸足を戻すべきです。②SaaS企業は自社プロダクトの「エージェント機能」ロードマップを3〜6カ月遅らせても致命傷ではなく、代わりにClaude Opus・GPT-5.5級のAPIを外部調達する前提の設計が現実的です。③EC事業者はマウス追跡データ収集問題を反面教師に、生成AI活用時の従業員データ取得ポリシーを今のうちに明文化しておくべきです。Metaがクラウド事業に参入する動きも、AWS一択だった調達戦略の見直し時期が近いことを示しています。

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