何が起きたか

Vertuは、経営者・富裕層をターゲットにした折りたたみスマートフォン「Alphafold」を6,880ドルで販売しています。カーフレザーとチタン、宝飾品のような専用パッケージという素材面での高級感に加え、目玉はプリインストールされたAIエージェント「Hermes Agent」です。オープンソースの「Hermes project」をベースに、ファイル分析、アプリをまたいだ作業の自動化、会話の記憶、複数ステップの業務実行、そして人間のコンシェルジュへの引き継ぎまでを担うと謳います。

TechCrunchのレビュアーは、文書管理・スプレッドシートや契約書の分析・出張計画などの経営者的ワークフローで数日間テストし、GoogleのGeminiを搭載したSamsung Galaxy Z Fold 7と比較しました。

Geminiとの比較で見えた「実行はするが正確でない」

結論は明快です。Hermesは自律的に動く意欲は高く、依頼された作業をより多く完遂した一方、Geminiのほうが結果の正確性で上回りました。

象徴的なのが2つのテストです。空港シナリオでは、Hermesはメッセージ送信・DNDの有効化・Google Maps起動まではこなしたものの、ナビは自動開始せず、午前2時32分に「15分後」と依頼したリマインダーを午後9時8分に設定しました。Geminiは追加質問をした上で正しい時刻に設定しています。ムンバイ発プネ行きの出張テストでは、Hermesは直行の朝便がないと答え、コンシェルジュへ引き継ぐ「Contact Butler」ボタンを提示した一方、カレンダー登録は18〜19日ではなく7月7日という誤った日付で作成しました。

ローカルの財務スプレッドシート分析では、初回はQ2の数字を正しく要約したものの、数日後には共有済み文書を認識できなくなり、「ローカル端末のファイルにはアクセスできません。チャットにアップロードしてください」と返す退行が起きました。

ハードの出自:ZTE/Nubiaプラットフォーム

レビュアーは、ヒンジ設計・寸法・スピーカーやマイク、指紋センサーの配置が1,100ドルのZTE Nubia Foldと酷似していること、システム情報にZTEの識別子が残っていることを指摘しました。VertuはTechCrunchに対し、ZTE/Nubiaのハードウェアプラットフォームを用いた専門的なサプライチェーン提携で開発したと認めつつ、高級素材・ソフト体験・品質管理・アフターサービスは自社が担うと説明しています。2023年にはWiredが、MetaVertuがZTE Nubia端末ベースと見られると報じ、Counterpoint Researchの見解として既存ZTEモデルへの高級素材・独自ソフト適用という手法を紹介していました。

初期ビルドはファイルのアップロードや画像分析、コンシェルジュ接続に難があり、指摘後にVertuはサーバー側の修正で機能を回復させています。264グラムと重く、価格の割にワイヤレス充電を欠く点も指摘されました。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

AIを「役員の秘書」に据える構想は、日本のSaaS・受託開発にとって示唆に富みます。Alphafoldの評価が割れた核心は、ハードの高級感ではなく「自律実行するが結果が不正確」という点にあります。リマインダーの時刻や出張日付を平然と誤る挙動は、経営判断や契約・投資といった高ストークス領域でのAIエージェントの現実的な限界を突きつけます。

業務自動化SaaSを提供する企業は、自律実行の派手さより「会話文脈の保持」「誤りを検知して人間へ引き継ぐ設計」を差別化軸に置くべきです。Hermesのコンシェルジュ引き継ぎ発想自体は正しく、日本企業が得意とする有人サポートと組み合わせれば勝機があります。

受託開発の観点では、Vertuが自らハードを作らずZTEプラットフォームに素材とソフト、品質保証を載せた構図は、垂直統合せず「体験レイヤーで稼ぐ」戦略の典型です。自社でLLMを持たずとも、業界特化のエージェント設計・データの秘匿処理・独立検証フローを束ねれば付加価値になります。経営者は「AIが実行したか」ではなく「検証済みか」を評価基準に据えるべきです。

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