何が起きているか
xAIは2025年3月7日、メンフィスで延床100万平方フィートの倉庫と隣接100エーカーを取得し、「Colossus 2」の建設に着手しました。同年8月22日時点で119台の空冷チラーが搬入され、約200MWの冷却能力(GB200 NVL72で約11万基相当)を確保しています。Oracle・Crusoe・OpenAIが15か月かけた規模を、xAIは6か月で構築した計算になります。
稼働中のColossus 1はH100/H200約20万基とGB200 NVL72約3万基、約300MWで、現時点で世界最大の単一AI学習クラスタです。Colossus 2は2025年第3四半期にはMeta SuperintelligenceとAnthropicの単一クラスタ規模を上回る見通しです。
電力をどう確保したか
メンフィス・テネシー州での反発を避けるため、xAIは2025年央に州境を越えたミシシッピ州サウスヘイブンで旧Duke Energyの発電所を取得。州当局は最長12か月の許認可猶予を与え、35MWのガスタービン7基が稼働しています。Tesla Megapackと中圧送電線でColossus 2に給電する構成です。
NYSE上場のSolaris Energy Infrastructureの1700MWの受注残のうち67%(1140MW)はxAI向けで、メンフィスに240MW、残り900MWはxAI 49.9%出資の合弁会社が保有します。2025年第2四半期のJV設備投資は1億1200万ドル、2027年第2四半期までに1.1GW超の稼働を見込みます。
巨額調達と中東との結節点
必要CapExは数百億ドル規模ですが、xAIの売上の多くはX.comからの社内振替とみられます。FT報道では評価額約2000億ドルで最大400億ドルの調達が議論され、サウジPIFが中心。サウジ国内に大規模データセンターを建設する「双方向ディール」が想定されています。Kingdom Holdingの旧Twitter株1.9億ドルや8億ドルのxAI出資、UAEのVy Capital(7億ドル)・MGX、QIA(3.75億ドル)など、中東勢とMuskの蜜月が下地にあります。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
日本企業の役員が読むべき含意
1. クラウド前提のAI戦略は早晩崩れる xAIは自前発電所まで保有する垂直統合に走り、6か月で200MWを立ち上げました。日本のSIerや事業会社が「AWS/Azureで足りる」と考える間に、フロンティアモデル各社は電力・土地・冷却を囲い込み始めています。基盤モデル学習に依存するSaaSや受託開発は、上流のキャパシティ枯渇により「最先端モデルへのアクセス権そのものが競争資源」になる現実を織り込むべきです。
2. 中東マネーの参入で序列が変わる サウジPIFが最大400億ドルを投じ、見返りにサウジ国内データセンターを得る構図は、日本企業が交渉相手として中東を意識せざるを得ない時代の到来を意味します。経産省・JBICと連動した「日の丸AIインフラ」の遅れは、商社・通信キャリアにとって死活問題です。
3. 環境規制の緩い場所への移転圧力 xAIがテネシーを避けミシシッピで12か月の許認可猶予を得た事実は、AI時代の電力立地が「規制裁定」の領域に入ったことを示します。日本のデータセンター事業者は北海道・九州など、電力・規制で柔軟な拠点の確保を今すぐ動かす必要があります。