何が発表されたか

AppleはWWDC 2026で、WWDC 2024に予告したまま約2年遅れていた新Siriを「Siri AI」の名称で正式発表しました。中核は、Apple IntelligenceとSiriの基盤をGoogleのGeminiモデルに載せ替えたことです。自社モデル路線から外部モデルへの依存に踏み込んだ点は、過去のApple像からの大きな転回といえます。

iPhoneではDynamic Island内に常駐し、「Siri」発話・電源ボタン長押し・上端中央から下にスワイプする新ジェスチャの3経路で起動します。呼び出すと「Search or Ask」インターフェースが立ち上がり、アプリ起動、メッセージ送信、カレンダー追加、ノート検索などをまとめて処理。macOSではSpotlightが入力内容に応じて自動でSiriへルーティングします。

何が新しいのか

Siri AIは、メッセージ・メール・写真など端末内のパーソナルコンテキストを横断検索し、アプリをまたいだ操作を自動実行できます。ChatGPTやClaudeに対抗する独立したSiriアプリも同時投入され、テキスト・音声・画像・ドキュメントを入力にでき、履歴はiCloudで同期されます。Mike Rockwell氏のデモではSuki Waterhouseのライブ情報照会から予定登録まで一連で実行され、別デモでは写真内のランドマーク認識と共有アルバムへの家族追加を音声で完結させました。

なぜ2年もかかったのか

WWDC 2024時点のデモはApp Intentsを核にした構想で、Kelsey Peterson氏がフライト追跡情報をSiriに照会する映像が披露されました。しかし当時Appleは報道陣に実機を触らせず、後にThe Informationが「実体は精巧なコンセプト動画だった」と報じています。Appleは2025年3月にDaring FireballのJohn Gruber氏に対し延期を認め、5月には「2024年に届く」と謳って販売したのは誤認だとする米国の集団訴訟で2億5,000万ドルの和解金を支払いました。今回のGemini採用は、自社で間に合わなかった現実への対応という側面が濃いと読めます。

展開と制約

まず英語から提供され、開発者は当日から、一般向けベータは年内開始予定。watchOSとvisionOSにも展開され、visionOSでは3D表現が用意されます。一方でEUと中国は規制要件の厳しさを理由に提供が遅れます。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本の事業会社にとって本件の核心は「Appleが自社で間に合わず外部モデルに切り替えた」事実そのものです。

SaaS・受託開発:Apple IntelligenceがGemini前提になることで、iOS向けAI機能の設計はAppleブラックボックスではなく、間接的にGoogleのモデル特性に影響されます。プロンプト設計やトークン消費の見立て、レスポンス傾向のテストは「Geminiを意識した検証」に組み替えるべきです。

EC・コンシューマ事業:Siri AIがDynamic IslandからアプリをまたいでアクションするUXは、自社アプリ単体での囲い込み戦略を弱めます。App Intents対応の優先度を上げ、「Siri経由で買える・問い合わせできる導線」を持つかどうかが、来年度のアプリ施策のKPIに直結します。

全業種共通:EUと中国でのリリース遅延は、グローバル展開する日本企業に「同一機能で同時ローンチできない」前提を突きつけます。海外子会社のIT・マーケ部門は、地域ごとのAI機能格差を織り込んだ運用設計に切り替える必要があります。役員層は「自社プロダクトがApple/Gemini経済圏の手のひらに乗る」前提を受け入れ、独自LLM志向よりも対応速度に予算配分すべきタイミングです。

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