何が起きたか

The VergeのレビュアーがmacOS 27 Golden Gate開発者ベータ上で、新しいSiri AIを24時間あまり試しました。検証機はM5 MacBook AirとM5 Max MacBook Pro。iPhoneやApple Watchで試した同僚は好意的だった一方、ノートPC上では「キーボードとマウスの方が速い」場面が多く、評価は割れました。

できたこと・できなかったこと

Siri AIはアプリの起動はできますが、アプリ内部での操作はできません。GeekbenchやCinebenchをShortcuts経由で自動実行させようとしても、Geekbench版はアプリを開いてスクリーンショットを撮るだけでベンチマークを走らせず、Cinebench版にいたっては「Wait for you to run the test」というステップが含まれていました。今後App Intentsが開発者に拡張されれば改善余地はある、という位置づけです。

一方、WWDCで披露された「Ask Siri in Spotlight」によるローカルファイル分析は概ね機能しました。Finder上でベンチマーク結果のスクリーンショットを束で選び、単コア・マルチコア・GPUスコアの平均を計算させて表に整形させる、といった処理はこなしています。ただしGeekbenchやPugetBenchのような合成スコアと、Blenderレンダリングや4K書き出しのような時間計測値を混在させると混乱し、Cinebench画面に映り込んだCPUランキングに引きずられる挙動も見られました。

Apple経済圏の内と外

「猫」「赤ちゃん」の画像検索はPhotosとMessagesしか参照されません。レビュアーはSignalで会話し、写真はGoogle Photosに上げ、Lightroom ClassicのカタログをPicturesフォルダにローカル保管しているため、Siri AIはその大半に到達できませんでした。Visual IntelligenceもGoogle Sheets全体は読めず、Excelで書き出してFinderで指しても、単コアトップを聞いたのにマルチコアの結果を返すなどの誤りが出ています。

モノクロ写真をAlan Schaller風に編集する露出・コントラストの指示は具体的で結果も悪くなかったものの、自分の出した結果を過剰に褒める「sycophantic」な挙動も観察され、Appleの説明とは食い違いました。総括は「baby’s first real AI steps for Apple」です。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

このレビューが示すのは、Siri AIの価値は「Apple経済圏にどれだけデータを置いているか」で決まるという構造的事実です。日本の事業会社で考えるべき論点は3つあります。

第一に、Mac配布企業の情シス・CIO視点。業務データがGoogle WorkspaceやMicrosoft 365、SlackやNotionに分散している組織では、Siri AIの「ローカル+Apple純正のみ」という設計は当面、業務用AIアシスタントの主役にはなりません。Copilotや独自RAGの投資判断を遅らせる理由にはならない、と読むべきです。

第二に、SaaS・受託開発企業。App Intentsを実装するかどうかが、今後Mac/iPhoneユーザーの業務動線に乗れるかを左右します。特に国内BtoB SaaSは、まずiOS側のApp Intents対応を最優先タスクに格上げすべき局面です。

第三に、EC・コンテンツ事業者。画像・ファイル分析が「Photos/Messages優先」である以上、自社アプリのデータをiCloud連携にどう寄せるかが、将来のSiri経由流入を左右します。「Apple経済圏内にデータを置く設計」がSEOに次ぐ新しい分配チャネル設計になりつつあります。

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