何が起きたか
Nianticは2025年5月、ポケモンGOの運営権をサウジアラビア系ファンドが出資するScopelyに売却すると同時に、位置情報・空間AI事業を担うNiantic Spatialを独立会社として分離した。Niantic Spatialはポケモンのスキャン機能などを通じてプレイヤーが撮影した公共の場所の画像300億枚を使い、GPSが届かない環境でも機能するビジュアル測位システムをAIで開発した。画像には端末の位置・向きのメタデータが付随していた。
軍事・商業両方への展開
Niantic Spatialは2025年12月、ドローンや地上車両向けの測位システム開発を目的にVantorと提携した。Vantorは米国家地理空間情報局(NGA)、複数の軍部門、国土安全保障省と契約実績を持つ企業だ。また2026年3月にはCoco Roboticsと提携し、配送ロボットの自律航行にも同技術を応用することが発表された。テスト結果では測位誤差が70%低減し、1.5メートルの精度を達成したとされる。
プライバシー上の論点
Niantic Spatialは「スキャンはオプション機能であり、2019年のプライバシーポリシーおよび公式発表から技術プラットフォーム改善への活用を明示してきた」と説明する。また「AIモデルはスキャンそのものではなく、彫像や噴水といった公共の観光地を学習した結果であり、元データへのアクセス手段にはならない」としている。
一方、Trouwの取材に応じたDelft University of TechnologyのJeroen van den Hoven氏は「ゲームをプレイするために取得した同意は、兵器プログラムへの同意にはならない。たとえ最終的な用途が正当化できるとしても」と指摘している。同じくFloris De Hingh氏は「多数のゲーマーによるスキャンがなければ、このシステムがここまで早く進歩することはなかった。プレイヤーたちは間接的に、おそらく最小限ではあるが、軍事応用に貢献した」と述べた。
VantorはNiantic Spatialとの提携についてコメントしていない。Niantic Spatialは「ポケモンGOのデータを直接共有する契約ではない」と説明するが、プレイヤーがピカチュウを捕まえていると思っていたデータが、最終的に軍関連機関と連携する企業の技術開発に繋がっていた構図は変わらない。
出典:Ars Technica