何が起きたか

LinkedInは、投稿を「seems like AI slop」として通報できる新しいレポート機能をテストしています。通報された内容は公開されず、投稿者のアナリティクス画面に「あなたの投稿が不自然、またはAIの多用に見えたと感じた人がいる」という形で「privately flag(非公開のフラグ)」として届きます。LinkedIn広報によれば、通報された投稿はアルゴリズム上のリーチが下がり、ユーザーが「興味がない」と示した場合と同様の扱いになります。

もう一方の動きが、AI執筆機能の撤収です。同社はかつて全投稿画面で推していた「rewrite with AI」ボタンを削除し、LLMで投稿やメッセージを「enhance(強化)」する内蔵ツールをやめます。代わりに入るのは、「あなたの言葉を校正するが、あなたの声は変えない」という、より抑制されたバージョンです。

なぜ重要か

注目すべきは、プラットフォーム側が自社のAI機能を自ら引き下げた点です。生成AIブームのなかで各SNSが執筆支援を増やしてきた流れに対し、LinkedInは「AIで書かせること」がフィードの価値を毀損すると判断したことになります。同社はすでにAI生成投稿のリーチを抑える更新を実施済みで、最高プロダクト責任者のHari Srinivasan氏は検出システムをさらに改善し、レコメンドに出るAI生成投稿は減るはずだと述べています。

つまりLinkedInは、AI投稿への対処を「検出(アルゴリズム)」と「通報(ユーザー)」と「供給の抑制(機能削除)」の三方向から同時に進めています。単発の機能追加ではなく、フィード品質をめぐる方針転換と読むのが妥当です。

数字が示す深刻さ

記事はLinkedInを「AIスロップの震源地」と表現します。AI検出企業Pangramの最近の調査では、LinkedInは「最もAI飽和度が高い」SNSで、長文投稿の40%超が「完全にAI生成」と判定されました。ユーザー自身の投稿だけでなく、AIボットによる自動投稿の大量流入もあり、Srinivasan氏によればこの数カ月で数十万件の自動コメントを検出し、数十億件の自動投稿の試みをブロックしたといいます。

もっとも、これらの施策が流れを変えるのに十分かは不明です。ブロック数が数十億という規模自体が、供給側の圧力の大きさを物語っています。

論点:AI利用そのものではなく「AIらしさ」が減点対象になる

通報の文言が「AI生成である」ではなく「AIスロップに見える」である点は重要です。判定基準は事実としてのAI使用ではなく、読み手が受ける印象に置かれています。校正機能を残す設計もこれと整合的で、LinkedInが問題視しているのはAIの利用そのものではなく、書き手の声が消えた画一的な文章だと読み取れます。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

影響が最も直接的なのは、LinkedInを商談導線に使うBtoB SaaS・海外向け製品を持つ日本企業・人材/採用担当です。生成AIで整えた英語投稿を量産する運用は、リーチ低下と「AIスロップ」通報という二重のペナルティを受ける可能性があります。テンプレ化した投稿を自動配信しているマーケ部門は、まず投稿本数のKPIを見直すべきです。数十億件の自動投稿ブロックという規模を踏まえれば、ツール経由の一斉投稿は今後さらに検出対象になります。

経営層が読むべき含意はもう一段深いところにあります。「AIで書かせた文章はリーチしない」という判断をプラットフォームが下したという事実です。自社のオウンドメディア、EC商品説明、営業メールでも、AI生成のまま出す運用は、検索・レコメンド側の減点対象になり得ると想定しておくべきでしょう。受託開発やコンサルでAI記事量産を提案してきた事業者は、提供価値を「量」から「一次情報と担当者の声が残る編集」に置き換える必要があります。

実務的な打ち手は明快です。AIは下書きではなく校正に使う。LinkedInが残した機能が「声を変えない校正」である点が、そのまま社内ガイドラインの原型になります。

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