精度は横並び、差は「間違え方」に出ている
AA-Omniscience Accuracyベンチマークでは、フラッグシップ同士の比較でClaude Fable 5(Max)が61%、GPT 5.6 Sol(Max)が59%。日常利用で体感できるほどの差ではありません。中位モデルではむしろChatGPT 5.6 Terra(Max)の46%がClaude Sonnet 5(Max)の38%を上回ります。つまり「どちらが賢いか」で選ぶ段階は、実質的に終わりました。
差が出るのはハルシネーション率(低いほど良い)です。Claude Fable 5が55%に対しGPT 5.6 Solは89%、中位でもSonnet 5の37%に対しTerraは85%。フラッグシップ・中位のどちらでもClaudeが明確に優位です。注目すべきは、旧モデルGPT-4oの38%が最新のGPT 5.6 Solの89%より良好だという点。新モデルがAA-Omniscienceのほぼ全項目でスコアを伸ばしているにもかかわらず、誤答の抑制という一点では後退が起きています。「ベンチマークが上がった=業務で使いやすくなった」ではない、という典型例です。
使われ方が違う:業務45%と非業務70%
2026年3月のAnthropic Economic Indexによれば、Claudeの会話は個人利用42%、業務関連45%、残りが学習用途。一方OpenAIの同種レポートではChatGPT利用の70%が非業務用途とされています。両者は同じ「チャットAI」に見えて、集まっているトラフィックの重心が違う。この差が、機能の作り分けにそのまま表れています。
機能の分岐点:Artifacts・Cowork対Sites・Codex
Claude Artifactsはコード断片、単一ページのHTMLサイト、インタラクティブなReactコンポーネント、図表を即座にレンダリングし、共有・Web公開までできます。さらに接続アプリやMCP(Model Context Protocol)コネクタ経由でライブデータを取得可能。対するChatGPTのSitesは社内利用を想定した法人向けで、Codexでしか使えず、ライブデータを引けません。
指示のまとまりを会話の途中でスラッシュ(/)から呼び出す「skills」も同様です。Claudeはチャット、2026年1月公開のClaude Cowork(ファイル整理などの知識作業を担う)、Claude Codeを横断して使えるのに対し、ChatGPTのskillsは個人ユーザーがCodexとAPIで使えるだけで、通常のチャットでは使えません。ワークフローに組み込む前提なら、この可搬性の差は無視できません。
逆にChatGPTが明確に強いのは音声と画像です。音声は自然で、途中で割り込んでも文脈を失わず、Advanced voice modeではライブ映像を使ったリアルタイム支援まで可能。画像生成もフォトリアルな出力に対応します。ClaudeはHTMLとSVGによる図表・チャート・インタラクティブなビジュアルに留まります。接客・現場支援・クリエイティブ用途ならChatGPT、という住み分けは依然として明快です。
無料枠に広告、そして2026年2月の分岐点
無料プランはどちらも中位モデル止まり(ClaudeはSonnet 5、ChatGPTはGPT-5.5)で、決定的な違いは広告の有無です。OpenAIは無料版とChatGPT Goに広告表示を開始しました。Sam Altman氏はかつて広告を「最後の手段(Last Resort)」と呼んでいます。Anthropicは逆に無料枠へ機能を追加し、広告は入れませんでした。ChatGPTには月8ドルで利用上限を増やしつつ広告は表示され続けるプランもあります。
有料帯はClaudeがPro(月20ドル/年払い月17ドル)、Max 5x(月100ドル、Proの5倍)、Max 20x(月200ドル、20倍)で、いずれもフラッグシップとClaude Codeにアクセスできます。ProはFable 5がトークン課金、Max 5x/20xは週次上限の50%までFable 5に充当でき、上限到達後は追加クレジットを購入可能。ChatGPTも20/100/200ドルと同水準ですが、Codexは無料アクセスながら利用上限が低く実質的に機能しない、と指摘されています。
最後に、2026年2月の出来事が効いています。Anthropicは大規模な国内監視と完全自律型兵器への利用を拒否したことで米国防省(US Department of War)との契約が破談となり、サプライチェーンリスクに指定されました。その数時間後、OpenAIが一定の安全策付きで同様の契約を代わりに締結したと発表。記事によれば、これを機に「より倫理的なAI企業」と受け止められたClaudeへ乗り換える動きが広がり、ダウンロードが急増しました。モデル性能ではなく、企業の姿勢が乗り換え理由になった事例です。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
日本の事業会社にとって実務的な結論は「用途で二重化する」ことです。ハルシネーション率55%対89%(中位でも37%対85%)という差は、契約書レビュー、仕様書の要件抽出、医療・金融の説明文生成など、誤りが賠償や信用に直結する領域でClaudeを選ぶ十分な根拠になります。逆にECのバナー・商品画像や店頭・コールセンターの音声支援なら、フォトリアル画像とAdvanced voice modeを持つChatGPTが優位です。
SaaSと受託開発の事業責任者は、skillsとMCPの可搬性を投資判断の軸に据えるべきです。Claudeのskillsはチャット・Cowork・Claude Codeを横断しますが、ChatGPTのskillsはCodexとAPI限定。社内ナレッジを「skills」として資産化するなら、どちらに寄せるかで再利用範囲が変わります。ArtifactsがMCP経由でライブデータを引ける一方、Sitesは引けない点も、社内ダッシュボード内製の可否を分けます。
もう一つの論点はブランドリスクです。2026年2月のAnthropic契���破談とOpenAIによる代替締結は、AI調達が「誰の技術を使っているか」という対外的表明になり得ることを示しました。BtoCブランドやESG開示のある企業は、採用ベンダーの姿勢が説明可能かを一度点検しておく価値があります。無料版の広告表示も、社員が私物アカウントで業務利用している場合の情報衛生上の論点として看過できません。