何が発表されたか

AWSは、コードの脆弱性を検出・修正するプラットフォーム「Continuum」を、Claude Code、Codex、そして自社のKiro IDEに直接組み込みます。ポイントは、統合先が自社IDEに限られない点です。開発者が選んだモデルやツールが何であれ、AWSのセキュリティ機能がコード記述の地点に入り込みます。

あわせて、2月に開始した「Security Hub Extended」——AWSの単一請求でまとまる厳選型のセキュリティ・マーケットプレイス——に10番目のカテゴリーとしてサプライチェーンセキュリティが追加され、ChainguardとSocketがパートナーに加わりました。掲載は現在23ソリューションで、長期契約の必須要件はありません。

なぜ今、コード脆弱性なのか

背景には、防御側と攻撃側の時間差が消えつつある現実があります。脆弱性の発見から武器化された攻撃コードが登場するまでの中央値は、2018年の771日から2024年には4時間未満へ短縮し、2026年末には1時間未満に達すると見込まれています。

そこに4月発表のClaude Mythos Previewが加わりました。事前評価では主要OSとWebブラウザ全体にわたり、これまで知られていなかったゼロデイ脆弱性を数千件特定し、その99%超が今も未修正のままです。AWSのChet Kapoor氏(検索・セキュリティ・オブザーバビリティ担当VP)は「CISOはもともとコード脆弱性を抱えていた。そこにMythosが登場して、状況がずっと悪化した」と述べ、バックログが5倍になったと表現します。

つまりAIは「見つける力」を先に一気に伸ばし、「直す力」が追いついていない。この非対称こそがContinuumの狙いです。

Continuumの構造:検出ではなく「検証済みの修正」を売る

ContinuumはAWSが「エージェントチーム・ループ・アーキテクチャ」と呼ぶオーケストレーション層で動きます。タスクごとに最適なモデルを選び、顧客環境に接続し、検証済みの安全なコードを返す設計です。処理は4段階に分かれます。

  • Discovery:複数のフロンティアモデルがコードを走査し、既存の脆弱性バックログも取り込む
  • Prioritization:顧客環境と事業リスクに照らして重み付けする
  • Validation:隔離サンドボックスで再現可能な攻撃を実際に組み立てる
  • Remediation:同じサンドボックスで検証済みの修正を提示する

Kapoor氏は優先度付けを「最大の価値の一つ」と位置づけ、「100件が2000件になると、そもそもどの100件に集中すべきかが分からなくなる」と語ります。Validationは自社で書いたファーストパーティコードだけでなく、依存しているサードパーティのOSSも対象です。修正はコードパッチに限らず、ネットワーク構成やポリシーの変更も含み、承認の主導権は人間側に残ります。自動化の度合いは組織が選べる形です。

課金は単一価格です。「顧客が買うのはContinuum、それだけ。どのモデルを何に使うかは我々が最適化する。率直に言って、GPT Cyberが得意なこともあれば、Mythosが得意なこともある」(Kapoor氏)。スキャン段階ごとに最良のモデルを使い、その裏側のトークンコストはAWSが吸収します。

競合か、パートナーか

AWSはクラウドAIサービスでOpenAIやAnthropicと直接競合し、AmazonはAnthropicへ巨額を出資し、OpenAIも同じ企業AI需要を狙って自社インフラを拡大しています。それでもKapoor氏は競合という枠組み自体を退けます。「競合とは誰のことですか。私はAnthropicもOpenAIもパートナーとしか考えられない」「1社だけでやるのでは十分ではない。時間が経てば、みな互いを追い越し合う」。

モデルは入れ替わる前提で、その上のオーケストレーション層(AWSはこれを「AIハーネス」と定義し、モデルをエンジン、ハーネスをその周辺すべてに喩えています)を押さえる——四半期あたり1430億ドルを超えるクラウドインフラ市場(Synergy Research Group)で、AWSはセキュリティの制御面を取りにいっています。AWSプレミアパートナーCaylentのCEO、Val Henderson氏はCRNに対し「企業にとってモデル選択が難所だったことは一度もない。難しいのは、本番でモデルが何をするかを信頼できるかだ」と述べています。

サプライチェーン:2つの異なる攻撃経路

Security Hub Extendedへの追加は顧客要望が起点だったと、AWSのセキュリティサービス担当ディレクターMichael Fuller氏は説明します。Chainguardは検証済みソースから再ビルドした堅牢なコンテナイメージとパッケージを提供し、Socketは開発環境に取り込まれる瞬間のパッケージ挙動を監視して、タイポスクワッティングやメンテナーアカウント乗っ取り、難読化された悪意あるコードを検知します。

両者が塞ぐ穴は異なります。既知の脆弱性を持たない悪意あるパッケージはChainguardのクリーンビルドで、信頼されたパッケージに乗っ取られたメンテナーが汚染更新を押し込むケースはSocketの挙動検知で捉える。Fuller氏は、AIコーディング時代にはこの両方が増幅されると指摘します。「エージェントは『これはよく知られたパッケージだ』と誤認させられ、悪意を持って難読化されて���ても取得してしまう」。

カテゴリー設計も特徴的です。AWS Marketplaceには既に数万のセキュリティ製品がありますが、Security Hub Extendedはカテゴリーごとに2社だけ——確立された定番と、異なるアプローチを取る一社——という構成を取ります。セキュリティ運用ではSplunkとSeven AIがその型です。EDRはAWSに構造的優位がないため完全にパートナー任せ、クラウドセキュリティは自社製品を持ちつつUpwindも並べる、という使い分けをしています。

残る宿題:シャドーエージェント

両幹部は、登録されていないAIエージェント=「シャドーエージェント」がCISOの新たな懸念になっていると認めました。Vertexやagent Coreといった登録ディレクトリに載らないエージェントが実害を及ぼしうるためです。ただしKapoor氏は「シャドーエージェントの発見は簡単ではない」と述べ、この問題をContinuumの発表とは切り離しました。攻撃面の拡大に対して、解決策はまだ揃っていません。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本企業への影響は「ツールの選択」より「責任の所在」に出ます。第一に受託開発・SIerです。Continuumのように再現可能な攻撃を作り、修正まで検証して返す仕組みが標準になれば、納品コードの脆弱性は「見つけられなかった」では通らなくなります。発注側が納品時にAI検証の結果提出を求め始める前に、契約書の瑕疵担保・セキュリティ条項をどう書き換えるかを法務と詰めるべきです。第二にSaaS・EC事業者です。武器化までの中央値が4時間未満、2026年末には1時間未満という前提では、月次パッチ運用は成立しません。「検知から修正デプロイまで何時間か」を経営KPIに引き上げ、深夜・休日に人の承認を待つ設計を今のうちに見直してください。第三に、AWSに寄せている企業ほど判断が要ります。単一請求・従量課金でカテゴリーごと2社だけという設計は導入を軽くしますが、セキュリティの制御面をクラウド事業者に預けることでもあります。Continuumは裏側のモデルをAWSが選ぶ設計なので、どのモデルが自社コードを読んだかは基本的に見えません。規制産業や機微なコードを持つ企業は、監査ログとデータ取り扱いの範囲を契約前に確認すべきです。まず動くなら、自社のOSS依存リストを棚卸しし、ChainguardとSocketが塞ぐ2種類の経路——汚染ビルドと乗っ取りアカウント——のどちらに自社が無防備かを1週間で洗い出すところからです。

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