何が起きたか

2026年1月27日のArcee AI「Trinity」シリーズを皮切りに、2月にかけてオープンウェイトの大型言語モデルが集中投入されました。Trinity Large(400Bパラメータ・アクティブ13B)に加え、Trinity Mini(26B/3B)、Trinity Nano(6B/1B)というサイズ違いをラインアップ。同日にはMoonshot AIがKimi K2.5(1兆パラメータ)を公開し、リリース時点でオープンウェイトの性能上限を引き上げました。

2月1日にはStepFunのStep 3.5 Flash(196B/アクティブ11B)、2月3日にはQwen3-Coder-Next(80B/アクティブ3B)が続きました。

アーキテクチャの「合流点」

注目すべきは、各社が独立に開発しながら設計が似てきている点です。Trinity LargeはOlmo 3に似た3:1のローカル:グローバル比でスライディングウィンドウ注意(窓幅4096)を採用、QK-Norm、SmolLM3風のグローバル層NoPE、Qwen3-Next類似のゲート付き注意、Gemma 3風の4層RMSNorm配置(2層目は約1/√Lで深さスケーリング)、そしてDeepSeekスタイルを粗くしたMoEを組み合わせます。GLM-4.5ベースモデルと実質同等の性能を示したとされ、設計の踏襲が成果に直結しています。

Kimi K2.5はKimi K2(DeepSeek V3アーキテクチャの拡張)を母体に、約15兆トークンの視覚・テキスト混合データでアーリーフュージョン事前学習を行い、ネイティブのマルチモーダル対応を獲得しました。アブレーションでは「視覚トークンは少量を学習序盤に投入する方が後半に大量投入するより効く」という知見が示されています。

スループットと長文脈の競争軸

Step 3.5 FlashはDeepSeek V3.2(671B)の3分の1以下のサイズでベンチマークを上回り、Hopper GPU上で128kコンテキストにて毎秒100トークンを出力(V3.2は33トークン/秒)。ゲート付き注意に加え、訓練だけでなく推論でもMTP-3(マルチトークン予測)を使う点が特徴で、GLM-4.7やMiniMax M2.1とも共通します。Qwen3-Coder-Nextは80B/アクティブ3Bながら、SWE-Bench ProでClaude Sonnet 4.5と同等、Opus 4.5にわずか及ばずという水準で、DeepSeek V3.2やKimi K2.5、GLM-4.7を上回りました。Gated DeltaNet+Gated Attentionのハイブリッドで262kのネイティブ長文脈を実現し、ローカル実行はollama版で約48.2GBストレージ・51GB RAMで動作します。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

役員視点での読み解き

事業会社の意思決定に直結するのは「サイズではなく構成」が性能を決め始めた点です。Trinity Largeの400BがGLM-4.5(355B)と実質同等、Step 3.5 Flashの196BがDeepSeek V3.2(671B)を上回るという結果は、巨大パラメータへの追加投資が一律にROIを生まなくなったことを意味します。

SaaS・受託開発企業にとっては、Qwen3-Coder-Nextがクラスタなしの単一GPUワークステーション(51GB RAM)で動き、Claude Sonnet 4.5級のコーディング性能を出す点が決定的です。コード生成系の機能をAPI課金で外部に依存している場合、原価構造を根本から見直す好機です。

ECや業務SaaSでは、Step 3.5 Flashの「128kでも100トークン/秒」というスループットが、長文コンテキストを前提とするカスタマーサポートや契約レビューのUXを変えます。レイテンシが顧客体験指標(CVR・解約率)に直結する業務では、推論コストとレイテンシを軸にベンダー比較を再設計すべきです。

今動くべきこと:既存のクローズドAPI契約を「置換テスト」にかけ、自社ユースケースで何B規模・どのアーキテクチャが最小コストで合格点に達するか、四半期内に検証チームを組成することを推奨します。

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