何が起きたか
中国のAI研究機関が直近1か月で、フロンティア級のオープンウェイトモデルを集中的に公開しました。Qwenは0.8Bから27Bまでの密モデル、35B-A3Bから397B-A17Bまでの混合専門家(MoE)モデルを揃えた「Qwen 3.5」シリーズを投入。Zhipuチームの「GLM-5」(744B-A40B)、MiniMaxAIの「MiniMax-M2.5」、StepFunの「Step-3.5-Flash」(196B-A11B)、Ant Lingも続きました。DeepSeek V4の登場も予告されています。
なぜ重要か
採用度を測る新指標Relative Adoption Metrics(RAM)では、スコアが1を超えれば同サイズ帯で歴代トップ10入りに相当します。OpenAIの「GPT-OSS」はLlama 3.1以来となる米国発の人気オープンモデルとして「off the charts」のダウンロードを記録した一方、DeepSeek V3.2など最近のDeepSeek大型モデルは2025年前半のリリースに比べ伸び悩んでいます。中国勢の層の厚さが、米国一強の構図を崩しつつあります。
注目すべき技術的差分
Qwen 3.5は全モデルがマルチモーダルで、Qwen-NextアーキテクチャとGDN層を採用し、推論をデフォルトで有効化(チャットテンプレートで無効化可能)。Step-3.5-Flashは数倍規模のモデルを上回る数学性能を示しました。GLM-5はリリース後に需要が急増し、コーディングプランの値上げに踏み切るほどの反響を呼んでいます。さらに韓国Trillion Labsは日英韓対応の「Tri-21B-Think」(21B)、openbmbは1Mコンテキストの「MiniCPM-SALA」(8B)を公開。アジア圏で多様な選択肢が広がっています。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
日本企業の経営者が今すべきこと
生成AI活用を「OpenAI/Anthropic API一択」で組み立てている事業会社は、コスト構造と地政学リスクの両面で再点検が必要な局面です。Qwen 3.5やGLM-5は自社サーバー・国内クラウドへのホスティングが可能で、SaaS事業者にとっては顧客データを国外に出さない選択肢として商談の決め手になり得ます。
受託開発・SIerにとっては、Qwenの0.8B〜27Bの密モデル群が「業務特化LLMのファインチューニング案件」の現実的な原資になります。GPT-4クラスのAPI課金前提で見送られていた案件が、397B-A17Bや196B-A11BのMoEを自社GPUで動かす構成で再検証できる段階に入りました。
EC・カスタマーサポート領域では、Tri-21B-Thinkの日本語対応が一つの試金石です。日本語強化された中型推論モデルが揃い始めた以上、役員レベルでは「6か月以内に主要LLMベンダーを1つに絞らずマルチ運用する」方針への切り替えを議論すべきです。中国製モデルの採用は社内ガバナンス(出力ログ管理・ライセンス確認)が前提ですが、選択肢を持つこと自体が交渉力になります。