何が起きたか
Eurogamerが報じたSteamDBの集計によると、現在開催中のSteam Next Festに参加する8,700タイトルのうち1,704本、19.5%が生成AI使用ラベルを付けています。およそ5本に1本が「制作過程で生成AIを利用した」と自己申告している計算です。
背景にあるのは、Valveが2024年に更新したガイドラインです。Steamで販売するゲームについて生成AIの利用をプレイヤーに開示するよう求める一方、「efficiency gains(効率化のための利用)」はラベル対象外とする運用に切り替えました。つまり今回の19.5%という数字は、開発工程に生成AIを「目に見える形で」組み込んだ作品の比率と読むのが妥当です。
なぜこの数字が重要か
注目すべきは、すでにリリース済みのタイトルでAI素材が見つかった際にプレイヤーからの強い反発が繰り返されている点です。今年話題となったCrimson Desertでは、差し替え漏れと見られるAI生成素材が指摘される事案が発生。最初からAI活用を打ち出していたArc Raidersも、ここ数カ月でAI利用を縮小する方針へと舵を切っています。
インディーシーンの主要開発者が「いつ・どこでAIを使うか」に対して厳しい姿勢を取ってきたことを踏まえると、19.5%という比率は「思ったより多い」と受け取られる可能性が高いでしょう。
透明性が新しい競争軸になる
Valveの開示制度は、AI活用そのものを禁じるのではなく、ユーザーの判断に委ねる設計です。結果として、ラベルを付けた上で「どの工程に、なぜ使ったか」を語れる開発者と、隠したまま炎上する開発者の二極化が進みつつあります。Steam Next Festのデータは、開示が業界標準になりつつある現実を可視化したと言えます。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
ゲーム以外の事業にも波及する「AI開示」の作法
この19.5%という数字は、ゲーム業界に閉じた話ではありません。コンテンツを売る日本企業(出版社、映像制作、広告代理店、アパレルEC、受託開発)にとって、Valveの運用は「プラットフォームが開示を義務化する」最初期の実例として読むべきです。
特に示唆的なのは、Valveが「efficiency gains」を開示対象外とした線引きです。バックオフィスや工程効率化に使うAIと、最終成果物に出力されるAIを分けて扱う考え方は、自社のAIガバナンス策定にそのまま応用できます。受託開発やデザイン制作を担うSaaS・制作会社は、納品物に対するAI利用の開示ポリシーを、クライアント契約書レベルで明文化すべきタイミングです。
一方で、Crimson DesertやArc Raidersの事例が示すのは「後出しの炎上コスト」の重さです。EC事業者が商品画像、ゲーム会社がアセット、メディアが記事素材で同じ事故を起こす可能性は十分にある。経営者は今、「使うか使わないか」ではなく「使った事実をいつ・どう開示するか」のルール作りに動くべきです。先行開示は、リスク対策であると同時にブランド差別化の手段になります。