「AI起因」を企業が公言し始めた
注目すべきは、AIを理由として企業が法定開示や公式発言で明言し始めたことです。Oracleは年次の規制当局向け書類で「AI技術の導入・展開がワークフォース削減につながった、今後もつながり得る」と記載しました。同社は3月5〜31日に終端メールで通告を始め、12カ月で約21,000人を削減。一方で四半期純利益は前年比27%増の37億ドル、残存履行義務は325%増の5,530億ドルと、業績好調下での削減という点が特徴です。
CiscoのMark Patterson CFOも「コスト削減ではなく、シリコン・光学・セキュリティ・AIへのリソース再配分」と説明し、5月14日に約4,000人(5%)を削減しました。利益・売上が市場予想を上回るなかでの判断です。
ミドルマネジメントと「測る人」が消える
CloudflareのMatthew Prince CEOは「先週解雇した大半はmeasurers(測る人)だった」と述べ、5月7〜8日に約1,100人(20%)を削減。中間管理職とサポート職が中心でした。Googleはローリング評価と買収オファーでクラウド部門のエンジニアを2026年に1,500〜3,000人以上削減した(外部推計)とされ、小規模チームを束ねるマネージャー数は過去1年で35%減りました。Coinbaseは5月5日に約700人(14%)を解雇し、CEO・COOの下5階層までフラット化、「1人チーム」の実験にも踏み込んでいます。
AIへの「組み替え」と二極化
Metaは5月20〜21日に約8,000人(10%)を削減する一方、約7,000人をAI職へ配置転換しました。IBMはHRの200ポジションをAIエージェントで置換しつつ、AI・ハイブリッドクラウド領域の米国の新卒採用を3倍に拡大する方針です。Salesforceは「Agentforceでサポート案件が減り、サポートエンジニアの補充を止めた」と明言し、サポート人員を9,000人から5,000人に縮小しました。BlockのJack Dorseyは2月26〜27日の4,000人削減(従業員数を1万人超から6,000人未満へ)の後、「ほとんどの企業は遅れている。1年以内に多くが同じ構造変化に至る」と発言しています。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
日本の事業会社が読むべきは「業績との関係」
今回の連鎖で重要なのは、業績不振リストラではなく、Oracle・Cisco・Cloudflareのように好業績下で行われている点です。SaaS・受託開発・EC・コンサルなど「人月で稼ぐ」事業構造に依存する日本企業の経営者は、自社の利益率が維持できているうちに人員構成を見直さなければ、3年以内に粗利率の競合差が広がります。
「測る人」「束ねる人」は日本企業にこそ多い
Cloudflareがmeasurersを、Googleが小チームのマネージャーを切ったのは示唆的です。日本のSIerや事業会社の本部スタッフ職には、進捗管理・レポーティング・調整専業の中間層が厚く存在します。生成AIで真っ先に代替されるのはこの層であり、課長・部長クラスの再配置プランを今期中に作る必要があります。
SaaS事業者は「サポート人員前提」の単価が崩れる
SalesforceがAgentforceでサポート要員を9,000→5,000に減らした事実は、SaaSベンダーの価格モデルが「サポート工数込み」から「セルフサービス前提」へ移ることを意味します。日本のバーティカルSaaSは、カスタマーサクセス人員を競争力の源泉にしてきた企業が多いだけに、CS人員のAI代替率を試算し、価格設計と組織を同時に動かす経営判断が問われます。