何が起きたか
OpenAIは、WhatsApp上でChatGPTを再び使えるようにしました。対象はEU加盟27カ国にリヒテンシュタイン・アイスランド・ノルウェーを加えた欧州経済領域(EEA)に限られます。2026年7月13日から、認証済みの連絡先「1-800-CHATGPT(+1-800-242-8478)」を通じて、アカウント登録なしで利用できます。
機能面では、テキストのプロンプトに加え、画像アップロード、ボイスメッセージ、画像生成が多言語で動作します。ボットに尋ねると自らを「GPT-5.5で動いている」と答え、画像生成はプロンプトの精度から判断すると「gpt-image-2」に振り分けられているとみられます。WhatsAppアカウントとChatGPTアカウントを連携すれば、OpenAI側の文脈を引き継ぎ、会話履歴を同期できます。ただし未連携時の利用上限は不明で、OpenAIが目立たない形で旧来の安価なモデルにリクエストを回している可能性も残ります。
なぜ重要か──「規制が競争を戻した」事例
この復活は、技術やビジネス判断ではなく規制がプラットフォームを開かせた点に本質があります。Metaは2026年1月15日、ビジネス規約の変更を理由にWhatsAppからChatGPTを締め出し、Microsoft CopilotやPerplexityも排除、自社のMeta AIだけを残しました。これに対し欧州委員会は2026年6月、暫定措置として競合の無料での再参入をMetaに命じました。
つまり、20億人超が使うメッセージング基盤へのアクセスが、プラットフォーマーの一存ではなく規制当局の判断で左右される段階に入ったということです。OpenAIは同時に、韓国のKakao、他市場のViberへの展開も進めており、「OSを持たないAI企業が、どのメッセージ基盤に相乗りするか」という配信チャネル争奪が鮮明になっています。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
注目すべきは「配信チャネルは規制で開いたり閉じたりする」という現実です。日本のSaaSやEC事業者がLINEやWhatsApp上にAI接客・チャットボットを載せる場合、そのAPI開放はプラットフォーマーの都合で1月のように一夜で止まりうる、と前提すべきです。Meta AIだけが残った経緯は、自社機能を優遇したい基盤側のインセンティブを示しています。
打ち手は二つ。第一に、特定メッセージ基盤に依存した顧客接点を作らず、モデル層(GPT-5.5等)とチャネル層を分離した設計にすること。第二に、日本には欧州委員会のような即効の是正命令が乏しい以上、チャネル遮断時の代替導線(自社アプリ・Web・別メッセンジャー)を平時から用意しておくことです。逆にAI受託開発企業には、Kakao・Viber・LINEなど各国基盤ごとの連携実装が新たな受注テーマになります。経営者は「どのAIを使うか」より「どの土管に乗るか」のリスクを経営課題として見直す時期です。