何が発表されたか

Kimiは、総パラメータ2.8兆・コンテキストウィンドウ100万トークンのマルチモーダルモデル「K3」を公開しました。画像と動画をネイティブに処理し、Kimiは「約3兆パラメータ級で初のオープンモデル」と位置づけています。全モデル重みは7月27日までに公開予定です。用途は長時間走る開発タスク、ナレッジワーク、複雑な推論に照準を合わせています。

注目すべきはアーキテクチャです。K3は896のエキスパートのうち16だけを同時に稼働させるMoE(混合エキスパート)構成を採り、「Kimi Delta Attention」により100万トークン級で最大6.3倍高速なデコードを実現するとしています。さらに「Attention residuals」で計算オーバーヘッドを2%未満に抑えつつ学習効率を約25%高めたと説明します。

性能はどこまで来たか

Kimi自身のベンチマークでは、K3はトップの独自モデルであるClaude Fable 5とGPT-5.6 Solにのみ及ばず、Claude Opusシリーズや中国のライバルGLM-5.2を含む他のすべてを上回りました。ただし全35テストの1位獲得は約7回で、最多勝を挙げたのはFable 5です。しかもベンチによってKimiCode・Claude Code・Codexと異なるエージェントが使われ、条件は完全には揃っていません。

独立評価機関Artificial Analysisも初評価を公表し、Kimiの主張をおおむね追認しました。Intelligence Indexは57点で総合4位、Opus 4.8やGPT-5.5と並びます。GDPval v2ではEloが1,190(K2.6)から1,668へ跳ね上がり、AutomationBench-AAでは53%で首位を獲得しました。一方でAA-Omniscienceの正答率は33%→46%に改善したものの、ハルシネーション率は39%→51%へ悪化しています。

「Vision in the Loop」と価格の転換

Kimiが主眼に置くのは、人の監督を最小限にした長時間のソフトウェア開発です。画面キャプチャを解析し、コードを修正し、表示出力を確認する閉ループ「Vision in the Loop」を、ゲーム開発・UIデザイン・CADの基盤と位置づけます。デモにはThree.js/WebGPUで手続き生成した3Dオープンワールドや、長征10号ロケットの打ち上げ・帰還シミュレーション、Game Boy Advanceエミュレータが含まれます。

そして最大の変化が価格です。K3の料金は前世代K2.6を大きく上回ります(出力は100万トークンあたり$4.00→$15.00)。中国勢がフロンティアモデルを「底値」で出す時代の終わりを示す一方、西側トップよりはまだ安く、Sonnet 5と同一の入出力価格でありながら性能はKimiが上回ると主張します。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本の受託開発・SaaS・EC事業者にとって、K3は「オープン重み×準トップ性能」という新しい選択肢です。7月27日の重み公開後は自社環境での運用が可能になり、機密コードや顧客データを外部APIに出せない金融・製造の受託案件で現実的な武器になります。ただし経営者が見誤ってはいけないのは価格シグナルです。K3はSonnet 5と同一料金帯まで上がり、Artificial Analysis換算で1タスク$0.94。GLM-5.2($0.32)やDeepSeek V4 Pro($0.04)とは桁が違い、「中国製=激安」という前提でコスト計画を立てている事業は見直しが必要です。加えてハルシネーション率が51%まで上昇した点は、人手監督を減らした自動開発ほど検収・テスト工程の設計が利益を左右することを意味します。事業責任者は今、①自社データで動かすオンプレ検証、②Fable 5/GPT-5.6 Solとの実タスク比較、③品質ゲートの再設計、の3点を並行で回すべきです。

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