何が起きたか
Blueskyは今週、AIアシスタント「Attie」に「Quests」という新機能を追加したと発表しました。ユーザーは「特定の分野や地域で最も影響力のあるアカウントは誰か」「いま何がトレンドか」といったオープンな問いを投げると、Bluesky本体だけでなくAT Protocolに連携するアプリ群を含む広域ネットワーク「Atmosphere」を横断して情報を集められます。
Attieは今年3月、プログラミング不要で自分専用のアルゴリズムやカスタムフィードを設計できる別プロダクトとして登場しました。将来的には自作アプリの「バイブコーディング」も視野に入れており、今回のQuestsはその方向性を、コンテンツ生成ではなく「情報を読み解く」側へ大きく振ったものです。当面は無料ですが、課金も検討されています。
なぜ重要か
ポイントは、AttieがコンテンツをばらまくAIではなく、Bluesky自身の言葉で「情報を読み解き、誤情報とノイズの氾濫に対抗して自力で真実を見つけるためのツール」と位置づけられていることです。同社は「世界を理解する助けとなるツールは、混乱を撒き散らすツールより有用だと賭けている」とし、生成一辺倒のAI観と一線を画そうとしています。
この姿勢には事情があります。Blueskyのユーザーは経済・政治・環境などの理由でAIを嫌う層が多く、企業として収益化を進めつつコミュニティの反発を避ける綱渡りが必要です。「真実を見つける道具」というフレーミングは、その緊張を和らげる設計思想でもあります。
背景:成長鈍化と経営体制の変化
Blueskyの登録アカウントは45.6百万に達し、昨年10月には1年で倍増して4,000万を超えました。しかし直近8カ月は成長が鈍化しています。同社は3月、2025年にクローズした1億ドルの資金調達を明らかにしており、Attieやプレミアム課金、パワーユーザー向けツールを試す資金的な余裕があります。経営面では3月にJay Graber氏がCEOを退き、Automatticの創業CEOだったToni Schneider氏が後任に就任、Graber氏は現在チーフ・イノベーション・オフィサーを務めています。Attieはアクセシビリティ機能や新ロゴを含む再設計が進行中です。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
AT Protocolは「特定SNSに閉じない、横断可能なソーシャルグラフ」を志向します。日本企業にとっての含意は二つです。第一に、EC・メディア・BtoCブランドのSNS運用担当が「Atmosphere全体で誰が影響力を持つか」を自然文で問える基盤が育ちつつあるということ。これはインフルエンサー選定やトレンド検知の内製化余地を広げ、ソーシャルリスニング系SaaSやマーケ受託の付加価値を再定義します。第二に、Blueskyが「生成AIではなく理解のためのAI」を明確に打ち出した点です。AI嫌いの顧客層を抱えるブランドや、環境・倫理を重視するBtoB企業にとって、AI導入の対外的な語り口として参考になります。ただしAttieは無料のベータでウェイトリスト段階、課金方針も未確定です。経営者は「今すぐ乗る」より、AT Protocol連携の実験を小さく走らせつつ、自社の顧客がAIをどう受け止めるかを見極める姿勢が現実的です。分散型ソーシャルは選択肢として観測対象に入れておくべきです。