何が変わり、何が変わらないのか

OpenAIが8月6日に告知した変更は、無料アカウントとGoティアにおける「テキストチャットの回数上限撤廃」です。8月10日の週から適用されます。

一方で、制限が残る機能ははっきりしています。ファイル・画像のアップロード、画像生成、Deep Research、音声モード、Codex、Workはいずれも上限つきです。残量はSettingsのUsageセクションで確認できます。OpenAIはAnthropicと同様、具体的な上限値を公開していません。

モデル面の制約も据え置きです。無料アカウントが使えるのはGPT-5.6ファミリーの最小モデル「GPT-5.6 Luna」のみで、TerraやSolを使うにはサブスクリプションかAPI課金が必要です。推論モードも1種類だけで、Thinkボタンで思考時間を延ばせますが、有料版のようなスライダーによる調整はできません。音声モードは無料でも使えますが、既定は小型の「Live-1 mini」です。コンテキストウィンドウとメモリ機能も無料版では制限されます。

「無制限」が意味するのは用途の線引き

注目すべきは、上限の設計思想が変わってきている点です。OpenAIはかつて5時間のローリングウィンドウで制限を管理していましたが、7月頃にこの方式をやめたとみられ、現在は週単位の単一上限に移行しています。そのうえで、計算コストが軽いテキスト生成だけを制限の対象から外した——という整理ができます。

実際、Thinkingモードの利用は、ファイル処理や他ツールの同時利用を伴わなければ別枠の上限を消費しません。つまり「会話は好きなだけ、重い処理は従量」という線引きです。ファイル周りの扱いも独特で、OpenAIはアップロードした文書や画像をユーザーのLibraryに保存して再利用できる設計にしており、無料アカウントのLibrary容量は500MBです。

無料版の対価は広告とデータ

無料ユーザーには、回答の下に「sponsored(スポンサー)」セクションとして広告が表示されることがあります。プロンプトに関連する商品やサービスが出る仕組みで、シーザーサラダの作り方を尋ねるとドレッシングが推薦される、といった具合です。OpenAIは、健康やメンタルヘルスといったセンシティブな話題の会話では広告を出さないとしています。広告は月8ドルのGoティアにも表示され、月20ドルのPro以上では表示されません。

もう一つの対価がデータです。OpenAIは無料アカウントを既定でモデル学習の対象にしています。外すには、PCのブラウザでChatGPTにアクセスし、プロフィールアイコン→Settings→Data Controlsと進み、「Improve the model for everyone」をオフにする必要があります。

(出典:Engadget)

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

経営として押さえるべき論点は3つあります。

第一に、シャドーITの前提が変わります。回数制限は、これまで従業員の無料版利用を実質的に抑制していた「見えない歯止め」でした。それが外れる以上、業務利用は増えると想定すべきです。とくに問題は、無料アカウントが既定でモデル学習の対象になっている点です。個人アカウントで顧客名や見積、コードを貼る行為が常態化する前に、法人契約への集約か、Data Controlsの「Improve the model for everyone」を無効化する手順の周知を、今週中に決めるべき事項として扱ってください。

第二に、日本のEC・D2C事業者にとって、回答下部の「sponsored」枠は無視できない新チャネルです。プロンプト連動で商品が推薦される仕組みは、レシピ・比較検討・トラブル解決といった購買前の文脈に直接入り込みます。検索広告の運用ノウハウを持つ会社ほど、早い段階での学習に投資価値があります。

第三に、SaaS・受託開発の値付けです。無料版がGPT-5.6 Lunaという最小モデル1つに固定され、コンテキストとメモリも絞られている以上、「長い文脈の保持」「重いファイル処理」「Deep Research」は依然として有償領域です。自社プロダクトの機能設計は、無制限化したテキスト生成そのものではなく、この境界の外側に置くのが妥当です。

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