何が起きたか
THE DECODERが伝えたところによると、性質の異なる3つのデータソースが揃ってGoogleのGemini離れを示しています。
AIテキスト判定プラットフォームのPangramは、投稿されたテキストを解析してモデル別のシェアを推計しています。同社のデータでは、OpenAIは計測開始以来すべての月で50%超を保持。Anthropicは4.3%から14.9%へと伸び、その中心は技術系・科学系の領域でした。一方Geminiは12%から2026年7月に1.9%まで落ち、Pangramはこれを「崩壊」と呼んでいます。
同じ傾向はOpenRouterのデータにも現れています。PangramとOpenRouterが捉える利用パターンはまったく異なるにもかかわらず、双方がGeminiのシェア縮小を示している点が重要です。Similarwebでは、Googleのウェブサイトシェアが前月の27%から26.8%へわずかに低下しました。ただしこの数字は1年前の9.4%からは大きく上昇しており、単純な凋落とは読めません。
なぜ重要か
GoogleはGemini Appの月間ユーザー数を10億と主張しています。しかし月間アクティブユーザーは「非常に質の低いシグナル」とされる指標です。プリインストールや既存サービスへの統合で到達できる数字であり、「実際に仕事で使われているか」とは別物だからです。
今回の3データはいずれも、その「実際に使われているか」の側を測ろうとしています。だからこそ、公式のユーザー数と実測データの乖離そのものがニュースになります。
3つの盲点を差し引いても残るもの
各ソースには明確な盲点があります。Pangramが測るのは主に文章作成タスクで、この領域ではGeminiはもともとClaudeやChatGPTに後れを取っていました。OpenRouterはオープンウェイトモデル寄りに偏ります。Similarwebはモバイルアプリを見ていません。つまりどれ一つとして単独では決定打になりません。
それでも、偏りの方向が互いに異なる3つの計測が同じ結論に向かうという構造は無視しにくいものです。THE DECODERは、この傾向がGoogle DeepMindで起きた最近の経営陣の刷新——Demis Hassabis氏を含む複数の幹部の離脱——を説明する一助になりうると指摘しています。データと組織の動きが同じ時期に重なっている点は、少なくとも記憶しておく価値があります。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
日本企業の実務では、Google Workspace経由でGeminiが「すでに入っている」状態の会社が多く、社内AI基盤の既定路線になりがちです。今回の数字は、その既定路線を一度点検すべき理由になります。
特に注目すべきはAnthropicの4.3%→14.9%という伸びが技術系・科学系に集中している点です。受託開発やSaaSのプロダクト組織では、コード生成・仕様レビュー用途でモデル選定を誤ると開発生産性に直結します。全社標準を1社に固定するのではなく、文章生成・顧客対応系と開発系でモデルを分ける運用が現実解でしょう。
ECや事業会社の役員が今すべきことは3つです。第一に、契約中のAI基盤について「切り替えコストがどれだけ発生するか」を棚卸しすること。プロンプトとエージェント定義をモデル非依存の形で持てているかが分岐点になります。第二に、ベンダーが提示する月間ユーザー数のような指標を鵜呑みにせず、自社の実測——実利用率、タスク完了率——で評価すること。第三に、Google DeepMindの人事変動が示すとおり、AIベンダーの競争環境は年単位ではなく四半期単位で動くと前提を置くこと。長期の排他契約は慎重に扱うべき局面です。