調査で何がわかったか
Pew Researchは、Webアーカイブ「Common Crawl」から過去5年ほどの英語Webページ約50万件を収集しました。起点はChatGPT公開の2年ほど前に置かれています。判定にはOpen PangramのAI検出技術を使いました。
2026年7月時点のスナップショットから無作為抽出した1万ページでは、約10%に「AI執筆の明確な兆候(significant signs of AI authorship)」が見られました。ただし無作為抽出には、そもそもAI執筆ツールが存在しなかった時代の古いページも混ざります。ChatGPT公開後に公開されたページだけに絞り込むと、比率は35%に跳ね上がりました。
ドメイン別の差は明確です。.comは.eduや.govの約10倍。.eduと.govはいずれも1%前後、.orgは4.6%でした。商業的な動機がある領域ほどAI生成が浸透している、という構図がそのまま数字に出ています。
なぜ重要か:Cloudflareの報告と重なる意味
この調査は、インフラ事業者Cloudflareが「ボットのWebトラフィックが人間のそれを上回った」と報告した直後に出てきました。Cloudflare自身の想定より早い到達だったとされています。
二つを並べると意味が変わります。Cloudflareが測ったのは「誰が読んでいるか」、Pewが測ったのは「何が読まれているか」です。TechCrunchの記事はこの重なりを、ボットが別のボットの書いたページを読んでいる状態と表現しています。
つまりWebの一部は、人間の読者を経由せずにコンテンツが生産・消費される閉じた回路になりつつある。SEO・コンテンツマーケティングという事業活動は、この前提の上で組み直しが必要になります。
「AIっぽさ」の指標は当てにならなくなる
Pewはem dash(—)、オックスフォードカンマ、「it’s not X, it’s Y」といった言い回しの使用が年々増えたことも観測しています。よく「AIの手癖」と言われる特徴です。
ただしこれは検出手法としては脆い。人間の書き手もAIの文体を無意識に吸収しますし、逆にこれらを避けるようAIに指示すれば済みます。TechCrunchも、Pangramを含むAI検出ツールが人間の文章を誤ってAI判定しうる点を指摘しており、35%という数値は精密値ではなく方向性として受け取るべきものです。
数値の精度より重要なのは傾向の一貫性です。Pew自身、この報告は同種の他調査を裏づけるものだと述べています。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
コンテンツで集客している事業は、前提の再点検が必要です。 .comドメインのAI生成率が.eduの約10倍という数字は、商用サイトのコンテンツが構造的にコモディティ化していることを示します。ECのカテゴリ解説記事、SaaSのお役立ちブログ、比較サイト——これらは今、同じモデルが同じ構造で量産した無数のページと競合しています。「月○本更新」をKPIにしたコンテンツ組織は、成果が出ない側に回る可能性が高い。
日本企業にとっては時間差が味方になります。 今回の対象は英語ページのみです。日本語Webの汚染度は不明ですが、遅れて同じ曲線を辿ると見るのが自然でしょう。差別化余地が残っているうちに、自社データ・顧客事例・現場の実測値といった「生成できない一次情報」に軸足を移せるかが分かれ目です。
受託開発・制作会社は納品物の説明責任を整えるべきです。 AI検出ツールは誤判定するとTechCrunchも指摘しており、「AI不使用」の証明は原理的に困難です。証明ではなく、AI利用範囲の事前合意と品質保証の基準を契約に落とし込む方が現実的です。
役員が今週やること: 自社の主要流入ページを10本選び、「これは他社のAIが3分で生成できるか」を判定する。できるなら、そのページは近い将来ほぼ確実に価値を失います。