何が起きたか

Reutersの報道によれば、Metaは「Project OT」と呼ばれる人員再編構想を進めていました。シナリオ下では一部の従業員に新しい役割を与え、他方でレイオフを行う想定で、あるHR幹部は約25%以上の人員削減になると述べたと報じられています。Meta自身はReutersに対し、削減規模を確定する前にProject OTを中止したと説明しています。

もう一つの要素が報酬です。Reutersが関係者2人の話として伝えたところでは、Metaは削減で浮いた原資の一部を高評価の従業員、とりわけAIエンジニアリングのスキルを持つ人材への支払いに充てる計画でした。単なるコストカットではなく、人件費の配分先を組み替える設計だった点が重要です。

「AIネイティブ」の定義が具体的である

Reutersが確認したProject OTの文書は、「AIネイティブ」な企業を、AI対応のツールとエージェントが相互にやり取りし、ワークフローが自動化され、新規の構築はAIファーストで行われる状態と定義していました。さらに、AIエージェントを第三者に販売することも含まれるとされ、Metaは6月に実際にその販売を開始しています。

この定義がなぜ効くのか。多くの企業の「AI活用」は、個人が生成AIを使って作業を速くする段階にとどまります。この文書の定義は、①ツールとエージェント同士が接続される、②ワークフロー単位で自動化される、③新規開発は最初からAI前提で設計する、④その能力を外部に売る、という4段階で、社内利用から事業化までを一直線に置いています。自社の到達点を測る物差しとして流用可能な粒度です。

中間管理職と評価の扱い

報道によれば、Metaは今年、エンジニアリングチーム、リサーチチーム、さらに少なくとも8つのチームをより小さなグループへ再編するパイロットを実施しました。この試行に先立ち、10月には製品管理チームのメンバーが「AI-Native Playbook」と題する社内投稿を公開し、中間管理職を取り除き、日々のタスクの優先順位付けに「エージェント支援の分析」を用いる方針を示していたとされます。

Reutersは、昇進の判断でHR従業員と「AIシステム」が経営陣を支援すると指摘しました。これに対しMetaは、評価と昇進の決定は過去も現在も人間が行っており、AIではないと回答しています。ここは事実として両論が並んでいる部分で、どちらが実態かは確定していません。

撤回が意味すること

5月のレイオフ直後、ザッカーバーグ氏は11月に予定されていた波を撤回したと報じられています。Reutersは、方針転換のきっかけが何だったのかは特定できなかったとしています。

注目すべきは、計画が止まったこと自体よりも、ここまで具体的な設計図が世界最大級のテック企業の内部で描かれていたという事実です。25%という数字は実行されませんでしたが、「AIエージェントを前提に組織図を引き直す」という発想が、思考実験ではなく人事プロセスの手前まで来ていたことを示しています。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本企業の役員が読むべき点は「削減率」ではなく「原資の付け替え」です。Metaの構想は削減分をAIエンジニアリング人材の報酬に回す設計でした。人件費総額を維持したまま単価の高い層に寄せる動きは、年功的な給与テーブルを持つ日本の事業会社では最も実行が難しい部分であり、ここを避けたままAI活用を語っても組織は変わりません。

受託開発・SIerは特に直撃します。Metaの文書が定義する「AIネイティブ」の最終段階はエージェントの外販であり、Metaは6月に実際に販売を開始しました。人月単価で工数を売るモデルは、顧客側が自社でエージェントを組める世界では縮みます。今期中に、既存案件のどの工程がエージェントで置換可能かを工程表レベルで棚卸しし、成果課金や運用型の契約へ持ち替える交渉を始めるべきです。

SaaS・EC事業者は、パイロットが「少なくとも8チームを小さなグループへ再編」した点に注目してください。AIで各人の生産性が上がると、チームの適正サイズと管理階層は変わります。まずは1つの事業部で階層を1段減らし、優先順位付けをエージェント支援に置き換える試行を、期限と撤退条件付きで走らせるのが現実的です。

ただしMetaが「評価と昇進は人間が決めている」と明言した点は踏襲すべきです。評価にAIを噛ませる設計は、労務リスクと現場の信頼の両面で最も高くつきます。

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