何が起きたか

FERCは木曜、PJMを含む6大系統運用者に対し、データセンターなど大口需要家からの送電網接続要求を「迅速かつ秩序立てて」処理するよう命令しました。接続コストはデータセンター側が負担します。系統運用者は30日以内に発電予備力の報告書を提出し、60日以内に管内の電力料金を「擁護または改定」する必要があります。固体トランスや超電導送電線といった代替送電技術の検討、自家発電(ビハインド・ザ・メーター)への柔軟な対応も求められました。

核心は「接続」ではなく「発電」

今回の命令は接続待ち行列の混雑を解消するための処置ですが、発電容量不足そのものには触れていません。2023年末時点で、新規発電所からの系統接続要求は既存発電所の総容量を上回り、データセンター電力需要は2035年までにほぼ3倍になる見通しです。過去20年ほぼゼロ成長に慣れた系統運用者には対応が追いついていません。

ねじれる電源政策

同じ週、トランプ政権はカリフォルニア・メイン・ニューヨーク沖の洋上風力リースをキャンセルするため、Invenergyに7.65億ドルを支払うと発表しました。同社はこの資金で中西部に天然ガス火力、西部に地熱を建設します。中止された風力1件のピーク出力は2.4ギガワット(約180万世帯分)でした。洋上風力潰しの累計は約26億ドルに達し、AI電力需要が爆発する局面で電源構成の選択肢を自ら狭める形になっています。最大の系統PJMは大手電力会社が離脱を示唆するほど混乱しています。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本のクラウド・AI事業者と製造業に直結する論点です。第一に、米国でAIインフラを増設している日本のSIer・クラウド事業者は、接続が早まる一方で卸電力単価が5年前比267%上昇しており、長期PPAやビハインド・ザ・メーター電源の確保が事実上の参入条件になります。経営者は「GPU調達」と同じ熱量で「電力契約」をリスク管理対象に格上げすべき段階です。

第二に、国内データセンター運営事業者(さくら・IIJ等を顧客に持つベンダー含む)にとっては逆風ではなく好機です。米国の電力ボトルネックが顕在化するほど、推論ワークロードの国内回帰・分散配置の交渉余地が広がります。SaaS事業者は「リージョン選択=コスト構造」と捉え直す必要があります。

第三に、洋上風力中止と天然ガス回帰は、サプライチェーン排出(Scope3)を持つ日本の輸出企業に効きます。米国データセンター経由のクラウドコストにカーボンが乗ってくる前提で、調達ポリシーと開示準備を前倒しすべきです。

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