何が出たのか

Liquid AIが公開したLFM2.5-230Mは、同社最小となる2.3億パラメータの基盤モデルです。スマートフォン、ノートPC、ロボットなど端末側で動くエージェント用途を狙い、19兆トークンで事前学習されています。

標準的なTransformerではなく、ゲート付きの短距離畳み込みとグループ化クエリ注意機構を交互に配置するLFM2アーキテクチャを採用。32Kトークンのコンテキストを保ちながら、メモリ使用量は400MB未満に収まります。Samsung Galaxy S25 Ultra(Snapdragon Gen4)でデコード213トークン/秒、Raspberry Pi 5でも42トークン/秒を維持します。

なぜ「小さいのに勝った」が重要なのか

Liquid AIによれば、ツール利用ベンチマークBFCLv3で43.26を記録し、IBM Granite 4.0-350M(39.58)、Gemma 3 1B IT(16.61)を上回りました。データ抽出のCaseReportBenchでも22.51でQwen3.5-0.8Bを超えています。

ポイントは、汎用知能で勝負していない点です。Liquid AI自身が「高度な数学・コーディング・創造的執筆では競わない」と明言しており、用途を「定型のデータ抽出パイプライン」と「自律エッジ系」に絞り込んでいます。同じ時期に話題のWeibo VibeThinker-3B(AIME 2026で94.3)やGemma 4 E2B(2B)とは戦う土俵が違うわけです。

エッジでの実装が見えてきた

Liquid AIはヒト型ロボットUnitree G1の搭載NVIDIA Jetson Orin上でLFM2.5-230Mを走らせ、「2秒静止し、毎秒1メートルで3メートル前進、片膝立ちを5秒、毎秒0.5メートルで3メートル後退」といった自由文の指示を、NVIDIA SONICフレームワークの低レベルスキル呼び出しに分解して実行させて見せました。

モデルはHugging Faceで配布され、llama.cpp(GGUF)、MLX、vLLM、SGLang、ONNXに初日対応します。一方でライセンスはOSI準拠ではなく、年商1,000万ドル以上の企業には別途エンタープライズ契約を求める「LFM Open License v1.0」です。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本の事業会社にとっての含意は、AI ETLのコスト構造が一段変わることです。請求書OCR後の項目抽出、問い合わせメールの分類、ECの商品マスタ正規化など、Claude Opus 4.6(入力100万トークンあたり5ドル)で回せばすぐに月数百万円規模になる定型処理は、LFM2.5-230Mクラスの小型モデルを社内サーバや端末側で常駐させる構成に置き換える検討余地があります。

SaaSベンダーや受託開発各社は、顧客の機密文書を外部APIに出せない金融・医療・自治体案件で、オンプレ完結のエージェント実装を提案できる素材が増えました。製造業や物流のエッジでは、Jetson OrinやRaspberry Pi 5クラスで自律処理が成立する点が現場PoCの設計を変えます。

ただし年商10億円(約1,000万ドル)を超える日本企業は商用利用に別途契約が必要です。経営者は「LLMは1種類で全部」をやめ、推論用のフラッグシップと抽出用の小型を使い分ける二段構えのアーキテクチャ方針を、今期中に技術部門に指示しておくべきタイミングです。

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