何が発表されたか

Acti(「action」の略)は、単語を予測するだけでなく、メール・メッセージング・SNSなど既存アプリの上でAIが実行まで担うキーボードを投入しました。チャット内に近隣レストランの候補を差し込む、株価をライブで貼り付ける、といった「入力欄からの即実行」が想定用途です。モデルはGeminiを採用し、多言語性能と応答速度、コスト効率を選定理由に挙げています。

差別化点は「文脈レイヤー」

目玉は「Skills」と呼ぶ機能で、翻訳や会議リンク共有といった複数ステップの操作を1キーに割り当てられます。標準では長押し「T」で翻訳、「C」で会議リンク発行。ユーザーはコード不要で自然言語からSkillを自作でき、公開マーケット「Skill Hub」で共有・将来的な収益化も見込みます。早期テストでは2週間足らずで1,000以上のSkillが作られたとされます。

プライバシー設計とビジネスモデル

Actiはローカルファーストを掲げ、私的なメッセージは既定では外部送信・保存しない設計を強調します。収益は上位モデル・上限拡張・プレミアム機能のサブスクリプションが軸。創業者Young WangはBaiduで10年、Facemoji Keyboardを3億DAU超に育てた経験を持ち、CTOのMike Sunも1,000万DAU級のYike Album出身と、大規模UI基盤の運用知見が経営陣に集まっています。

なぜ「キーボード」なのか

Wang氏は、LLM以後の「テキストは意図の運び手になった」との認識から、日常的に触れる最基層のUIを再発明する意義を語っています。ブラウザや専用アプリではなく“入力欄そのもの”をAIの起点に据える発想が、既存アプリを置き換えずに全体を横断できる根拠です。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本の事業会社にとっての含意は「AIの主戦場が“アプリ内”から“入力レイヤー”に移りうる」点です。自社アプリ内チャットや業務SaaSに独自AI機能を組み込んできた企業は、ユーザーがOSレベルのキーボードでAI操作を完結させるようになると、「AI機能そのものでの差別化」が急速に痩せます。

特に日本のBtoC SaaSやEC事業者は、CRMや接客チャットの文面生成をアプリ内AIで囲い込む戦略の見直しが必要です。むしろ「Skill Hub」型のマーケットに自社ワークフロー(見積送付、在庫照会、予約リンク発行など)をSkillとして配信し、キーボード側から自社APIを叩かせる導線を先に取る発想が現実的でしょう。

受託開発・SIerにとっては、顧客企業向けに“社内専用Skillパック”を作る新カテゴリが立ち上がる可能性があります。一方で情報システム部門は、業務端末で任意のAIキーボードが機密テキストを扱うリスクをMDMポリシーで先回りして詰めておくべき局面です。役員層は「自社の価値はUIか、それともAPIとデータか」を今期中に線引きし直す必要があります。

関連リンク