The Vergeが示した2026年夏の「気分」
The Vergeは毎年夏に編集部員が持ち寄る「IN/OUT」リストを公開しており、今年もMia Sato、Victoria Song、Hayden Fieldら10名超の記者が参加しました。個人の趣味嗜好が並ぶ体裁ですが、テック専門メディアの編集者が何を「もう飽きた」「これから面白い」と感じているかを映す指標として無視できません。
AI関連の項目が「OUT」に集中
注目すべきは、AIに関わる項目の多くが「OUT」に振り分けられている点です。Victoria Songは「常にすべてを記録するAIウェアラブル」を、Marina Galperinaは「映画における生成AI」を、Hayden Fieldは「別れのメッセージをAIに書かせること」をOUTに挙げました。一方でHayden Fieldは「大家への手紙をAIに下書きさせる」ことや「AIには絶対に思いつけないような、常識外れのデザイン発想」はINとしています。AI全否定ではなく、「用途によって熱狂が冷めている」構図です。
Kevin McShaneが「自作のto-doアプリをvibecodingすること」をOUTに、「シンプルなプレーンテキストファイル1つ」をINに置いたのも象徴的です。生成AIで身の回りのツールを量産するブームへの倦怠感が透けて見えます。
デバイスと消費の潮目
Kevin Nguyenは「リファービッシュ品を買うこと」をIN、「新品デバイスを買うこと」をOUTに。Antonio DiBenedettoは「高額なPCゲーミング」をIN、「高額なコンソールゲーミング」をOUTに置きました。派手な新製品消費から一歩引いた姿勢がにじみます。
💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか
日本の事業会社にとって示唆的なのは、テックメディアの内側で「AIウェアラブル」「vibecoding」「生成AI映像」といった、いまスタートアップ投資と広告予算が集中している領域が軒並み「飽きられ始めている」と評価された点です。
SaaSやEC事業者は、生成AIによる「なんでも自動化」を売りにするプロダクトの寿命が想定より短い可能性を織り込むべきです。特に「常時録音・常時記録するAI」はプライバシー面での逆風とセットで語られており、日本市場に投入する際は法務リスクだけでなく「気持ち悪さ」への感度が高まっている前提で設計する必要があります。
受託開発企業にとっては逆にチャンスです。「vibecodingで作った脆い自作ツール」に飽きた層が、堅牢な設計と保守を求めて戻ってくる可能性があります。経営者は、AI一色のマーケティングから「AIをどこで使わないか」を明示する差別化に舵を切る時期に来ていると言えます。