Config 2026で発表された機能群

サンフランシスコで開かれたConfig 2026で、Figmaはデザインファイル中心の世界観を大きく超える更新を一気に投入しました。Figma Makeはチームの本番コードを取り込み、ブランチ・コミット・プルリクエストの操作をターミナルなしで実行できる形でベータ提供されます。Code Layersはデザインとコードを並べて編集でき、GitHubリポジトリの取り込みやエージェントによるコード生成にも対応します。

さらにモーション機能でアニメーションやタイムラインをデザインシステムに組み込み、Dev ModeとMCP経由で本番反映が可能になりました。重ね影で奥行きを「ふり」をしてきた従来の手法は、3D変換を備えた深度レイヤーに置き換えられます。WebGPUを使ったシェーダー機能では、ディザリング・ピクセル化・すりガラス・クロームといった表現を、エージェントが文章指示から生成します。昨年買収したWeaveは「AIマテリアル」として統合され、20以上のツールが今週からキャンバス上で使えるようになります。

95%のFortune 500を握る企業の不安

FigmaはFortune 500の95%が自社製品をFigmaで作っていると主張するほどの基盤を持ちます。それでも市場の評価は厳しく、2025年夏のIPO初日に143ドル弱まで跳ねた株価は、2026年4月のClaude Design公開前後に下げ足を速め、52週安値は16.60ドル、現在は19ドル前後と、最高値から約88%下落した水準で推移しています。直近の売上は46%伸び、2025年度には10億ドルの大台に乗ったにもかかわらず、です。

Claude Designというカウンターパンチ

株価低迷の引き金のひとつが、AnthropicのClaude Designです。プロンプトから数分でクリック可能な完成度の高いUIを生成する同サービスは、「製品はデザインファイルから始まる」というFigmaの前提そのものを揺さぶります。AnthropicのプロダクトトップMike KriegerがClaude Design公開の数日前にFigma取締役を退任し、アクティビスト投資家Findell Capitalが取締役会とAnthropicの関係についてガバナンス調査を要求した事実は、両社の蜜月が事業上のリスクに転じたことを示しています。

借り物モデルが粗利を削る

FigmaのAI機能はOpenAI・Anthropic・Googleからのレンタル推論で動いており、2025年を通じて粗利は92%から86%へと急落しました。CEOのDylan Fieldは「市場のモデル革新の恩恵を受けつつ、自前のモデルも訓練できる立ち位置にいる」と語りますが、訓練してきたのは効率改善目的の小さなモデルが中心です。デザインシステムとコードを紐付けるCodeConnectで推論コストを約30%削った例はあるものの、根本治療には程遠いのが実情です。対照的にCanvaはAPIプロバイダ依存から脱却すべく自前モデルの訓練に振り切っており、両社の戦略は分岐しています。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本のSaaS企業と受託開発会社にとって、Figmaの粗利急落は他人事ではありません。AI機能を「APIで後付け」する戦略は、ユーザー体験を一気に底上げできる代わりに、92%→86%という6ポイントの粗利低下が示す通り、SaaSの根幹であるユニットエコノミクスを直撃します。月額課金で値付けした機能の裏で従量制の推論コストが膨らむ構造は、国内のホリゾンタルSaaSや業務特化型ツールにそのまま当てはまります。

経営者が今すぐ検討すべきは三点です。第一に、AI機能の価格設計を「使い放題」から従量・段階課金へ見直すこと。第二に、CodeConnectのようにドメイン知識で推論を圧縮する仕組み(プロンプト短縮・キャッシュ・小型モデルへのルーティング)を内製KPIに据えること。第三に、CanvaとFigmaが分岐したように、自社モデルを持つか借り続けるかの方針を取締役会レベルで決め、調達先1社への過度な依存を避けることです。受託開発各社は、Claude Designのような「上流を飛ばす」プロダクトの登場を前提に、デザイン工程と実装工程を一体で受ける提案へ早急に舵を切る必要があります。

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