何が起きたか

Googleの2025年サステナビリティ報告によれば、同社の電力消費は前年比37%増加し、カーボンフットプリントは約1,450万トンCO2換算に達しました。これは国別排出量ランキングで約100位、コートジボワールとパナマの間に位置する規模です。要因は明白で、生成AIを含むデータセンター需要の急拡大です。

一方でGoogleは、9年連続で世界全体の電力消費を100%再生可能エネルギー購入でマッチングしていると強調。2025年には過去最大となる12ギガワット規模の「net-new clean energy(新規追加のクリーン電源)」の購入契約を結んだと発表しました。2010年から2025年までに38億ドル超を投じ、7.5ギガワットのクリーン電源をオンライン化する見込みです。

「100%再エネ」の裏側

ただしGoogle自身が認めているとおり、この「100%再エネ」は電力証書ベースの数字であり、実際のデータセンターは地域の送電網から化石燃料由来の電力を引いています。この矛盾を埋めるため、Googleは「24/7 carbon-free energy(常時カーボンフリー)」、つまり時間単位・地域単位で発電と消費を突き合わせる方式への移行を掲げています。

『Everything Everywhere All at Once』

エネルギー分析会社CleanviewのMichael Thomas CEOは、Googleが世界最大級のクリーンエネルギー投資家であると同時に、再エネから天然ガスまで手広く抑える「Everything Everywhere All at Once(全方位・同時展開)」戦略に舵を切ったと分析します。実際、Googleの投資先は次世代原子力、核融合、拡張型地熱、長時間蓄電、そしてCCS付き天然ガス火力にまで広がっています。

それでも懸念は残ります。Thomas氏が2026年4月のニュースレターで指摘したのは、Googleがテキサス州のデータセンターに投じる400億ドルの中に、CCSを備えない933メガワット級の天然ガス火力から電力供給を受ける可能性のあるキャンパスが含まれていること。この火力の年間排出量は450万トンCO2に達し得る規模です。Google広報はThomas氏に対し、当該火力からの電力調達契約はまだ結んでいないと回答しています。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本の事業会社にとって、この報告は「AI活用と脱炭素は両立するのか」という経営課題を突きつけます。

クラウド利用側(EC・SaaS・受託開発) は、AI機能の本格実装を進めるほど、Scope 3(サプライチェーン排出)経由でカーボンフットプリントを増やす構造に組み込まれます。CDP回答やTCFD開示を行う上場企業や、大企業に納品するSaaSは、クラウド事業者の再エネ調達方針を「時間・地域マッチング(24/7 CFE)」ベースで説明できるかがRFPの争点になり得ます。証書ベースの数字で押し切る時代は、AIの電力消費が桁で伸びる局面ではもたないと見るべきです。

経営者・事業責任者が今すべき打ち手は3つ。(1)AI機能ごとの推論コストを「円/リクエスト」だけでなく「gCO2/リクエスト」でも把握する社内KPIを持つ。(2)GCPだけでなくAWS・Azureの地域別電源構成を比較し、日本リージョン以外への配置も含めた最適化を検討する。(3)顧客からの環境DDに備え、「AI利用による排出増分」を切り出して説明できる資料を今のうちに整備する。Googleですら天然ガスに頼らざるを得ない現実は、AI導入を「安く速く」だけで議論する時代の終わりを示しています。

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