何が起きたか

4年前にGPT-3とDALL·Eで作った企画メモ——「泥棒アライグマのチームを率い、銀行強盗から名画の窃盗まで次々と大仕事をこなす」というゲーム設定——を、Simon Willison氏は水曜にClaude Fable 5へ一発で投げ、動くゲームを得ました。今回は同じプロンプトを、Codex Desktop上のGPT-5.6 Sol Ultra、すなわちSolがサブエージェントを積極的に使うモードにも投げています。

結果の差は、遊びの構造そのものに出ました。Fable 5版はアライグマ1匹が裏庭でコインと魚を拾い集める内容。Sol版「Moonlight & Mayhem」は舞台が美術館で、仲間のアライグマ2匹を救出し、3匹を積み上げてケース内の黄金のイワシを奪う——という段取りのある課題になっています。元の設定文にあった「強盗」という核を、後者はゲームメカニクスに翻訳できていた、という差です。

なぜ重要か

注目すべきは「どちらのモデルが賢いか」ではなく、同じ入力から出てくる成果物の“設計の深さ”が、実行モードによって変わるという点です。サブエージェントを多用するモードは、要件の分解・素材生成・組み立てを並走させられます。実際このプロジェクトではgpt-image-2でテクスチャまで生成し、52分で完了しています。単発の推論力より、エージェントの走らせ方が納品物の質を決める領域が確かにある、という実例です。

それでも人が要る、という証拠

一発生成版には、各アライグマの眼球が巨大な球体になって頭上に浮かぶという派手なバグが残りました。Codexは開発中にスクリーンショットをレビューしていたにもかかわらず、これを検知も修正もできていません。直したのは人間で、しかも「なぜアライグマに大きな黒い球がついているのか?」「直して」という2言だけです。

ここが実務的にいちばん効く論点でしょう。AIは自己点検の“手続き”は踏んでいたが、“おかしさ”の判定はできなかった。逆に人間側は、原因も実装も知らないまま、違和感を指摘するだけで修正に至っています。品質保証の役割分担が、実装から知覚へ移りつつあることを示す小さな事例です。なお当該バグ版もそのまま遊べる形で残されています。

公開されたもの

リポジトリにはゲーム本体に加え、生成に使ったプロンプトとテクスチャ、そしてCodexの全トランスクリプトが含まれます。氏はこの「Markdownとしてコピー」機能がClaude Codeにも欲しいと書いています。さらに、このセッションをフルのAPI料金で換算した場合のコスト推定(AgentsView)と、実際に支払っている月額Codexサブスクリプションとの比較も添えられています。記事は2026年8月7日付のリンクブログ投稿です。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

示唆は3点あります。第一に、モデル選定より「実行モード選定」の時代に入りつつあること。同一プロンプトでFable 5とGPT-5.6 Sol Ultraの成果物が構造的に違った以上、社内の生成AI活用ガイドラインを「どのモデルを使うか」だけで書いている企業は更新が必要です。サブエージェントを多用するモードは並列で走る分コストも跳ねるため、受託開発・SIerであれば「試作は一発生成、要件が固まったらサブエージェント全開」といった段階別のモード運用を見積根拠に組み込むべきです。

第二に、品質保証の再定義。Codexはスクリーンショットを見ていながら眼球バグを見逃し、人間は「なぜ黒い球が?」の一言で直させました。ECのLPやSaaSのUI改修でも同じことが起きます。実装工数が消える一方、違和感を言語化できる人材の価値は上がる。QAを外注コスト扱いしている事業責任者は、ここを削るとAI活用の効果ごと失います。

第三に、コストの可視化。フルAPI価格と月額サブスクの差が明示されたことは、社内の予算設計にそのまま効きます。定額プランで走らせている開発チームの実消費が実は数倍相当、というケースは珍しくありません。まずは自社の主要ワークフロー1本でAPI換算コストを測り、定額と従量のどちらに寄せるかを今期中に決めるのが実務的な一手です。

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