何が公開されたのか

Ahead of AIが、ローカルで完結するコーディングエージェント構築チュートリアルを公開しました。中核は、Qwen3.6 35B-A3B(ダウンロード22GB、必要RAM約30〜40GB)をOllamaで配信し、Qwen-Codeハーネスから呼び出す構成です。ハーネスはファイル読み書き、コマンド実行、変更検証までを担い、LLMは推論とコード生成のエンジンとして機能します。CodexやClaude Codeのようなプロプライエタリ・サービスに対し、透明性・検査可能性・電気代を除けば「無料で回せる」点を打ち出しています。

なぜ今ローカル構成なのか

著者自身は普段CodexとClaude Codeを主力に据えつつ、ローカル環境はテスト用途に使うと明言しています。それでも本稿が重要なのは、提供側のリスクを直視しているためです。価格改定への耐性、再現性、機内やコテージなどネット遮断環境での稼働、そしてOpenAIやAnthropicに領収書データを送らずに済むプライバシー。さらに、Anthropicが研究用途で旗艦モデルの性能を制限していた事例を引き、商用APIが今後より制約的になり得る可能性に触れています。GPT 5.4→5.5→5.6と上位モデルが置き換わるたびに挙動が変わる現実への保険、という性格も持ちます。

性能・選定の論点

モデル選定では、Cohereの6月ベンチマークでQwen3.6 35B-A3Bが同サイズ帯のローカルモデルでほぼ全項目を制したこと、Nvidiaが2026年5月に公開した『Polar: Agentic RL on Any Harness at Scale』ではQwen3.5-4BがQwen-Codeハーネス上でPolar-RL前後ともに最良コード性能を示したことが根拠として挙げられます。実測ではMac Mini(M4)で約40トークン/秒、DGX Sparkで約30トークン/秒。Qwen 35B-A3BはMLX最適化のおかげでMacの方が速い一方、Gemma 4 E2Bは逆という非自明な結果も示されました。RAMが30GBに満たない環境にはgemma4:e2b(約8GB)が推奨されます。代替としてCohereのNorth Mini Code、クラウド側ではGLM 5.2が紹介されています。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

事業責任者にとって本稿は「APIコストの変動を経営計画から切り離す」選択肢として読むべきです。特にコードレビュー支援や社内ツールにLLMを組み込んでいるSaaS事業、見積りや要件定義書をLLMに通す受託開発会社にとって、ベンダー側の価格改定やスロットリングは粗利を直撃します。Mac Mini M4一台で40トークン/秒が出る現実は、月額のCodex/Claude Code相当の支出を、減価償却可能な資産支出へ振り替えられることを意味します。

また個人情報保護法対応が重い金融・医療・法務・人事系のSaaSや、領収書・契約書をLLMで処理したいバックオフィスSaaSでは、Qwen3.6 35B-A3B+Ollama構成が「外部送信ゼロ」の監査答弁の根拠になります。CTOへの示唆は明確で、(1)主力はCodex/Claude Code継続、(2)機密案件・オフライン現場・原価試算用に同居するローカル系統を持つ、という二系統運用の検証を今期内に始めるべきです。Qwen-CodeとCodexは同一マシン上で共存可能と明記されており、移行ではなく併存が現実解です。

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