何が起きたか

TechCrunchのモビリティ・ニュースレターが伝えたのは、自動運転業界にかかる二つの逆向きの力です。連邦政府がアクセルを踏み、州や自治体がブレーキを踏んでいます。

NHTSA(米運輸省道路交通安全局)は自動運転関連の規制手続きを簡素化し、開発と展開を加速させるための一連の announcements を出しました。その一つが、Zooxに対する連邦自動車安全基準8項目の一時的な適用除外です。ハンドルもペダルも持たない専用設計車両は既存の基準に構造的に適合しないため、この除外がなければ有料サービスは成立しません。Zooxは商用化に残っていた規制上の関門をほぼ通過したとし、ラスベガスでの有料運行開始が間近だと説明しています。

反対方向の動きも同時に進んでいます。7月4日の混雑でWaymoのロボタクシーが動けなくなり、電力を使い切って主要道路を塞ぎ渋滞を悪化させた件を受け、そのおよそ2週間後にルーリー市長が州の規制当局に規則強化を求めました。マリン議員は連邦規制当局に自動運転事業者向けの全米最低安全基準の策定を指示する法案を提案し、会見でルーリー市長も発言しています。マリン議員は「自動運転車が緊急対応要員の活動を意図せず妨げる事例が、憂慮すべき、率直に言って容認できない数で起きている」と述べました。

なぜ重要か

争点が「技術が走れるか」から「街とどう共存するか」に移った、という点です。Zooxの除外は車両設計という製品側の論点、緊急車両との干渉や立ち往生は運用側の論点です。連邦が製品要件を緩めるほど、運用の責任は事業者と自治体の間に残ります。Waymoが2か月超にわたり高速道路の走行を止め、工事区間付近の挙動への懸念を検証したうえで復帰させたのは、その運用リスク管理の実例です。

周辺で同時に起きていること

ロンドンでは競争が集中しています。BaiduがLyft、およびLyftが取得したタクシー・マルチモビリティアプリのFreenowとの提携で自動運転車の試験を開始し、2027年に一般利用者の配車開始を計画。Waymoは4月から安全担当者を乗せた試験を始め、UberはWayveと組んで年内のサービス開始を掲げています。

資金の流れも活発です。The Boring Companyは評価額200億ドルで40億ドルの調達を交渉中と報じられ、Lucidはアルワリード・ビン・タラール王子が約1900万株超(およそ5%)を取得。商用フリート向けテレマティクスデータ基盤のTerminal(トロント)はBattery Ventures主導で2000万ドルのシリーズAを調達し、PenskeやIntact Private Capitalが新規に参加しました。配送側ではWalmartとAlphabet傘下Wingがフロリダ中部でドローン配送を開始、FlytrexはNashと提携し、DoorDashは自社機体まで含めたドローン配送事業の構築を明らかにしています。フロリダ州は連邦NEVIプログラムで得た2億ドルをEV充電網ではなくeVTOL向けの32か所の発着場と充電設備に充てました。

既存自動車メーカー側の温度差も見えます。TechCrunchが金融調査会社Hudson Labsと共同でGMとFordの7年分の決算説明会を分析したところ、両社ともEVに言及する頻度がパンデミック前より低下していました。両社はかつて電池・EV工場に投資と合弁を積み増しましたが、現在も販売と新型車の計画は続く一方で、力点は移っています。

💼 事業会社視点:これは自社にどう効くか

日本企業への含意は三つあります。第一に、モビリティ関連の海外展開を検討する事業会社は「連邦が緩め、自治体が締める」二層構造を前提に事業計画を組む必要があります。Zooxのように連邦の適用除外を取れても、サンフランシスコのように自治体が独自要求を積む地域では、緊急車両対応や立ち往生時の遠隔対応体制が実質的な参入条件になります。想定コストは車両側ではなく運用側に乗ると見るべきです。

第二に、部品・ソフト受託開発の事業責任者にとっては、Terminalが2000万ドルを調達し、PenskeやIntactのような事業会社が出資した点が示唆的です。稼ぐ場所は自動運転そのものより、フリートのテレマティクスデータ基盤や運行記録の側に寄っています。緊急対応との干渉が法案の論点になる以上、走行ログの取得・保全・提出を担うレイヤーは規制対応需要として立ち上がります。既存の車載ソフト受託から、証跡管理・遠隔監視のSaaSへ提案の軸を移す好機です。

第三に、EV前提で調達計画を立てている製造業やECの物流部門は、GMとFordがEVへの言及を減らしているという分析、そしてフロリダ州がEV充電向けの2億ドルをeVTOL発着場に振り替えた事実を、需要見通しの下方修正シグナルとして扱うべきです。EV一本足の投資計画は、ドローン配送(Walmart・Wing、DoorDash)を含む複線化に組み替える判断が要ります。